お役立ちコラム

有給休暇の年5日取得義務とは?パートも対象?中小企業の管理簿と実務5ステップ

目次[非表示]

  1. 1.結論|有給休暇の年5日取得義務は3点を押さえる
  2. 2.背景|年休の「付与日数」と「年5日の取得義務」は別
  3. 3.今すぐできる対策|有給休暇の管理チェックリスト10項目
  4. 4.よくある失敗と回避策|現場で起きやすい5つの誤解
  5. 5.具体的な進め方|年5日取得を管理するSTEP1〜5
  6. 6.具体例|神戸の小さな飲食店で年休管理表を作る
  7. 7.外注・相談する判断基準|勤怠と給与計算を切り離さない
  8. 8.よくある質問|有給休暇の年5日取得義務 FAQ
  9. 9.まとめ|年休管理は「人別の基準日」と「実際の5日取得」から

この記事は、従業員1〜20名程度の小規模事業者、個人事業主、店舗経営者、給与計算・労務管理の担当者向けです。「パートにも有給休暇はある?」「5日取得させる期限はいつ?」「管理簿には何を書く?」という疑問を、2026年10月時点の公的資料に基づいて整理します。

忙しい小さな会社では、シフトや給与計算は管理していても、従業員ごとの年次有給休暇の基準日や取得日数までは把握できていないことがあります。年休は、本人から申し出があったときだけ対応すればよい制度ではありません。一定の要件を満たす労働者には法律上の付与日数があり、法定の年休が年10日以上付与される人には、会社が年5日の取得を確実にする義務があります。

ここで混同しやすいのが「年休を付与すること」「実際に休んでもらうこと」「管理簿に記録すること」の3つです。さらに、週3日勤務のパートでも勤続年数によって5日取得義務の対象になる場合があります。この記事では、まず対象者を判定し、期限・取得実績・残り日数を一枚で管理する方法を、実例とチェックリストで説明します。

制度自体は2019年4月から施行されている全国共通のルールであり、2026年に新設された義務ではありません。神戸・尼崎など兵庫県内でも基本の取扱いは同じです。地域の違いは主に相談窓口や管轄であり、法定の「年5日」が地域ごとに変わるわけではありません。

出典:厚生労働省|働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」

結論|有給休暇の年5日取得義務は3点を押さえる

① 対象は「その年に法定年休が10日以上付与される人」

正社員だけでなく、パート・アルバイト、有期契約社員、管理監督者も対象になり得ます。判定するのは雇用形態の名称ではなく、当該基準日に新たに付与される法定年休の日数です。前年度からの繰越分を足して10日になっただけの場合は、それを理由に新たな5日取得義務が発生するわけではありません。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「年次有給休暇はどのような場合に、何日与えなければならないのでしょうか」

② 付与日(基準日)から1年以内に5日取得させる

対象者については、本人の申請による取得、計画的付与、会社による時季指定を組み合わせて、基準日から原則1年以内に合計5日を確保します。本人がすでに5日取得していれば、会社がさらに5日を指定する必要はありません。未達の場合は、本人の希望を聴いたうえで不足分の取得時季を指定します。

出典:厚生労働省|働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」

③ 「基準日・取得日・取得日数」を記録して保存する

年次有給休暇管理簿には、従業員ごとの基準日、取得した日付(時季)、取得日数を記録します。法定の保存期間は原則5年ですが、経過措置により当分の間3年です。給与台帳や労働者名簿と一体化した様式、必要時に出力できる電子管理でも構いません。

出典:厚生労働省|確かめよう労働条件「年休取得管理簿の作成・保管」

背景|年休の「付与日数」と「年5日の取得義務」は別

年次有給休暇は、原則として雇入れから6か月継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者に発生します。週5日勤務や週30時間以上の人は、初回に通常10日、1年6か月で11日、2年6か月で12日と勤続年数に応じて増えます。パートであっても、週所定労働時間が30時間以上なら一般の付与日数の対象です。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「年次有給休暇はどのような場合に、何日与えなければならないのでしょうか」

週30時間未満かつ週4日以下などの短時間労働者には、勤務日数に応じた比例付与の仕組みがあります。たとえば週3日勤務では初回6か月の法定年休は5日ですが、5年6か月では10日になります。その時点で初めて「年5日の取得義務」の対象となる例があります。週4日勤務では、3年6か月で10日になります。勤務条件が変わった場合も、付与日数を再確認しましょう。

出典:厚生労働省|年次有給休暇取得促進特設サイト「休み方に関するマニュアル」

働き方の例

勤続年数・法定付与日数

年5日取得義務

週5日・一般的な勤務

6か月/10日

対象

週4日・週30時間未満

6か月/7日

この時点では対象外

週4日・週30時間未満

3年6か月/10日

対象

週3日・週30時間未満

6か月/5日

この時点では対象外

週3日・週30時間未満

5年6か月/10日

対象

※表は週所定労働日数が定まっている一般的なケースです。年間所定労働日数で判定する場合や、途中で労働条件が変わった場合などは個別に確認します。法定日数を上回る独自の休暇制度も、法定の年休と区別して管理してください。

この5日取得義務は2019年4月1日から大企業・中小企業ともに適用されています。2025年から2026年にかけて新たに「全パートが5日必須」になったわけではありません。年休の法定付与日数や基準日を従業員ごとに確認することが出発点です。

出典:厚生労働省|働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」

今すぐできる対策|有給休暇の管理チェックリスト10項目

まず従業員一覧、雇用契約書、勤怠記録、これまでの年休申請を用意し、次の項目を確認してください。紙の一覧表でも、担当者と確認日を決めれば運用できます。

□  全従業員の入社日・継続勤務期間を一覧にした

□  週所定労働日数・週所定労働時間を最新の契約で確認した

□  出勤率8割の判定と例外の扱いを確認した

□  各人の法定年休付与日数と基準日を記録した

□  当年度に法定10日以上付与される対象者を抽出した

□  基準日から1年間の期限を個人別に設定した

□  全日・半日・時間単位の取得実績を区分して記録した

□  5日義務に算入できる日数と不足日数を確認した

□  未達者の希望を聴き、取得予定をシフトに反映した

□  管理簿の記録・保存・給与計算との照合担当を決めた

「残日数が多い人」だけを抽出するのは不十分です。前年度の繰越分を含めた残高と、今回の基準日から1年以内に取得した5日義務の実績は、別の数字だからです。月末に「残高」「義務対象」「期限までの不足日数」の3列を点検すると、見落としを減らせます。

よくある失敗と回避策|現場で起きやすい5つの誤解

失敗1|「パートだから年休はない」と判断する

短時間勤務でも、継続勤務と出勤率の要件を満たせば年休が発生します。付与日数は所定労働時間・日数や勤続年数で変わるため、雇用形態の名称だけで除外しないでください。週3日勤務の人でも、長く働けば年5日取得義務の対象になる場合があります。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「年次有給休暇はどのような場合に、何日与えなければならないのでしょうか」

失敗2|「5日付与したから義務は終わり」と考える

会社が10日以上の年休を帳簿上付与しただけでは、5日取得義務を満たしたことにはなりません。本人が実際に取得した日数を確認し、不足があれば時季指定を検討します。本人が自ら5日取得済みなら会社の追加指定は不要です。取得予定日だけでなく実績も残しましょう。

出典:厚生労働省|働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」

失敗3|時間単位年休を「5日取得」に換算する

半日単位で取得した年休は、原則として0.5日として年5日の判定に算入できます。一方、時間単位年休は、たとえ合計時間が数日分になっても、年5日の取得義務の計算には算入できません。会社独自の特別休暇も同様に別管理です。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「半日単位年休と時間単位年休」

失敗4|全員の期限を一律に3月31日とする

基準日は従業員ごとに異なることが基本です。たとえば4月1日入社で6か月後の10月1日が初回基準日なら、通常は翌年9月30日までの1年間で5日を確保します。会社で基準日を統一する場合や、法定より前倒しで付与する場合は、重複期間の計算に特則があるため慎重な確認が必要です。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「働き方改革関連法セルフチェック」

失敗5|休暇の取得日を勤怠と給与へ反映しない

年休管理簿では取得済みなのに、給与計算では欠勤控除している、といった不一致は避けたいところです。申請・承認、勤怠確定、給与計算、管理簿更新を同じ締め処理でつなぎましょう。年休取得を理由とした不利益な取扱いにも注意が必要です。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「年次有給休暇はどのような場合に、何日与えなければならないのでしょうか」

具体的な進め方|年5日取得を管理するSTEP1〜5

STEP1|従業員別に「付与日」を確定する

入社日、継続勤務期間、出勤率、週所定労働日数・時間を一覧にします。正社員だけでなく、アルバイト・有期雇用・管理監督者も含めて確認します。まず法定の付与日数を判定し、基準日を登録します。勤務形態が途中で変わった人や産休・育休から復帰した人は、出勤率の扱いなども確認しましょう。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「年次有給休暇はどのような場合に、何日与えなければならないのでしょうか」

STEP2|10日以上付与される対象者と期限を抽出する

各基準日に新たに付与される法定年休日数が10日以上かを判定します。対象者ごとに基準日と原則1年後の期限を設定し、一覧表で「義務対象=はい/いいえ」を分けます。前年度の繰越分だけで10日に達する人は、今回の義務対象と混同しないようにします。

出典:厚生労働省|働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」

STEP3|取得実績を「全日・半日・時間」で集計する

申請書・勤怠データをもとに、実際に休んだ日付と日数を記録します。全日年休1回は1日、半日年休2回は合計1日として計算できますが、時間単位年休は5日義務への算入から除外します。計画年休を導入している場合は、労使協定や就業規則等の整備状況も確認します。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「半日単位年休と時間単位年休」

STEP4|不足日数を早めに調整し、希望を聴く

たとえば2026年4月1日が基準日の従業員が、10月時点で全日年休2日と半日年休2回を取得していれば、5日義務に算入できるのは合計3日です。残り2日を2027年3月31日までに取得できるよう、本人の希望を聴いてシフトを調整します。会社が時季を指定する場合も、本人の意見を聴取し、その意見を尊重するよう努める必要があります。

出典:厚生労働省|働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」

STEP5|月次締めで更新し、管理簿を保存する

毎月の給与計算前後に、年休申請と勤怠実績を照合し、管理簿の取得日・日数・基準日を更新します。期限が近い未達者を把握できるよう、3か月前・1か月前などの社内アラートを設けると便利です。管理簿は法令に沿って保存し、担当者が交代しても追跡できるようにしましょう。

出典:厚生労働省|確かめよう労働条件「年休取得管理簿の作成・保管」

具体例|神戸の小さな飲食店で年休管理表を作る

神戸市内の飲食店で、正社員2人とパート3人を雇用しているとします。正社員Aさんの基準日は2026年4月1日で法定年休は11日、週3日勤務のパートBさんは勤続6か月で法定年休5日、週4日勤務のパートCさんは勤続3年6か月で法定年休10日とします。AさんとCさんは年5日取得義務の対象ですが、Bさんは今回の付与日数では対象外です。ただしBさんにも法定の年休は付与されます。

従業員

今回の法定付与

取得済み(5日算入分)

今期の不足

A:正社員

11日

全日3日+半日2回=4日

1日

B:週3日パート

5日

全日1日

5日義務は対象外

C:週4日パート

10日

全日2日+半日2回=3日

2日

※上記は説明用の架空例です。取得済みの集計期間は各人の基準日からの1年間でそろえます。AさんとCさんの不足分を同じ「年度末まで」と決めるのではなく、個人ごとの期限を確認することが重要です。

この店では店長が毎月25日に翌月シフトを仮作成し、従業員の年休希望を確認、月末に勤怠確定、翌月の給与計算時に管理簿を更新する流れにします。急な欠員に備え、業務を複数人で担当できるようにしておくと、取得しやすい職場づくりにもつながります。

外注・相談する判断基準|勤怠と給与計算を切り離さない

従業員が数人なら、年休管理表をExcelや紙で作って自社管理する方法もあります。ただし、勤務日数が変動するパートが多い、複数店舗がある、基準日を統一している、計画年休や時間単位年休を導入している場合は、日数の判定や就業規則・労使協定の確認が複雑になります。そうした場面では労働基準監督署や社会保険労務士へ相談するとよいでしょう。

入社時の勤務条件や最初の勤怠設計を確認したい方は、関連記事「初めて従業員を雇うときの手続きガイド」が参考になります。

残業と休暇の双方を含めて勤務管理を見直す場合は「36協定とは?中小企業の残業ルールと届出」も併せて確認してください。

退職時に残っている年休の扱いを知りたい場合は「従業員が退職するとき会社がすること」へ進むと、退職日との関係を整理できます。

給与計算や勤怠管理の事務負担が大きい場合は「バックオフィス代行とは?」で外注する範囲を考えられます。

地域の公的相談先として、兵庫労働局は神戸東・神戸西・尼崎などの総合労働相談コーナーを案内しています。たとえば神戸東総合労働相談コーナーは神戸市中央区海岸通29、尼崎総合労働相談コーナーは尼崎市東難波町4丁目18-36です。具体的な労働基準監督署の管轄は事業場所在地で異なりますので、兵庫労働局の一覧で確認してください。全国共通の年休ルールと、地域の相談先は分けて考えましょう。

出典:兵庫労働局|総合労働相談コーナーのご案内

出典:兵庫労働局|労働基準監督署の所在地一覧・管轄

ぴくさぽは70年以上、神戸・尼崎を中心とする阪神地域で、中小企業の記帳、給与計算、労働保険事務、経営支援などを行ってきました。「管理簿をどこから作ればよいか分からない」「給与計算と勤怠が合わない」といった段階でも、現状の資料を整理するところから相談できます。法令の個別解釈、就業規則の専門的な作成・届出など、社会保険労務士等の資格が必要な業務は適切な専門家と連携して進めます。

よくある質問|有給休暇の年5日取得義務 FAQ

Q1.従業員が1人でも年5日取得させる必要がありますか?

はい。その従業員に当年度の法定年休が10日以上付与されるなら、事業規模に関係なく年5日取得義務の対象です。就業規則の届出義務がある「常時10人以上」とは別の制度です。

出典:厚生労働省|働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」

Q2.週3日のパートも必ず5日取得させますか?

必ずではありません。週3日・週30時間未満の人は初回6か月の法定付与が通常5日なので、その時点では5日取得義務の対象外です。ただし勤続5年6か月で法定10日となる場合は対象になります。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「年次有給休暇はどのような場合に、何日与えなければならないのでしょうか」

Q3.本人が自分で5日取得していれば、会社の指定は不要ですか?

不要です。本人が自ら取得した年休や適切な計画年休の日数を5日に算入できます。不足分がある場合に、本人の意見を聴いたうえで会社が時季を指定します。

出典:厚生労働省|働き方改革特設サイト「年次有給休暇の時季指定」

Q4.半日年休や時間単位年休も5日に数えられますか?

半日年休は1回0.5日として算入できます。時間単位年休は年5日の取得義務には算入できません。時間単位年休自体は別途、労使協定などの条件を満たして導入する制度です。

出典:厚生労働省|スタートアップ労働条件「半日単位年休と時間単位年休」

Q5.管理簿は紙でなければいけませんか?

紙に限りません。基準日、取得日、取得日数が確認でき、必要時に出力できる形であれば、電子管理も認められています。保存期間は当分の間3年という経過措置があります。

出典:厚生労働省|確かめよう労働条件「年休取得管理簿の作成・保管」

まとめ|年休管理は「人別の基準日」と「実際の5日取得」から

有給休暇の年5日取得義務は、2019年から全国の事業主に適用されている基本ルールです。大切なのは、①当年度に法定年休が10日以上付与される対象者を把握する、②基準日から1年以内に5日を実際に取得してもらう、③取得日・日数・基準日を管理簿に記録する、という3点です。パートの比例付与や半日・時間単位の扱いを混同せず、毎月の勤怠と照合しましょう。

ぴくさぽでは、給与計算や労働保険事務などの支援を通じ、小規模事業者のバックオフィスを整えるお手伝いをしています。開業前や従業員が少ない段階でも、「何を質問すればよいか分からない」というところからご相談いただけます。法的な個別判断が必要なときは、社会保険労務士等と連携しながら、無理なく続けられる管理方法を考えましょう。

協同組合阪神商工共済会
協同組合阪神商工共済会
創業70年の実績がある協同組合です。 近年重要さが増しているスタートアップ支援、バックオフィス業務の整備などをサポートしています。 給料計算、会計データ入力などの経理部門はもちろん、人を雇用した際の社会保険・労働保険手続き、さらには販売促進や設備投資の際の補助金申請サポートまで幅広い範囲知見をもとに執筆いたします。