お役立ちコラム

初めて従業員を雇うとき何をする?小さな会社・個人事業主の手続きチェックリスト

目次[非表示]

  1. 1.結論|初めて従業員を雇う前に押さえる3つのポイント
  2. 2.なぜ「従業員を雇う手続き」は複雑に感じるのか
  3. 3.採用前に使えるチェックリスト10項目
  4. 4.よくある失敗と回避策
  5. 5.初めての採用を進める5ステップ
  6. 6.自社で行うか、外注・相談するかの判断基準
  7. 7.よくある質問
  8. 8.まとめ|初めて従業員を雇うときは「採用前の設計」が重要

初めて正社員、パート、アルバイトを採用する小規模事業者向けの記事です。「従業員を雇う手続き」を、採用前の準備から労働保険、社会保険、給与計算まで順番に整理します。

「仕事が増えて一人では回らない」「週2〜3日のアルバイトを採用したい」「初めて正社員を入れたい」。事業が成長すると、人を雇う場面が出てきます。ところが、求人を出すことは考えていても、労働条件通知書、労災保険、雇用保険、社会保険、給与計算まで準備できていないケースは珍しくありません。

従業員を雇う手続きは、雇用形態の名称だけで決まるものではありません。「アルバイトだから保険は不要」とは限らず、週の所定労働時間、雇用見込み、事業所の形態などによって確認事項が変わります。

この記事では、2026年9月時点の厚生労働省、兵庫労働局、日本年金機構、国税庁の公開情報をもとに、初めての採用で経営者が準備したいことを実務順に解説します。個別の加入判定や労務判断はケースによるため、迷う場合はハローワーク、年金事務所、社会保険労務士などへ確認してください。

結論|初めて従業員を雇う前に押さえる3つのポイント

・1.求人を出す前に、仕事内容・勤務時間・賃金・雇用期間・給与支払日などの条件を決める。

・2.労災保険、雇用保険、社会保険は「正社員・アルバイト」という呼び方ではなく、制度ごとの要件で確認する。

・3.勤怠→給与計算→保険・税金の手続きを一つの流れとして設計し、最初の一人から管理方法を決める。

初採用で重要なのは、手続きを暗記することではなく、「誰が、いつまでに、何を確認するか」を決めることです。従業員が増えてから管理方法を作り直すより、一人目の段階で基本を整える方が負担を抑えやすくなります。

なぜ「従業員を雇う手続き」は複雑に感じるのか

理由は、採用すると複数の制度が同時に始まるからです。労働条件の明示は労働基準法関係、労災保険・雇用保険は労働保険、健康保険・厚生年金は社会保険、給与から差し引く所得税は税務、と窓口もルールも異なります。

厚生労働省は、2024年4月から労働条件明示のルールが変わり、全ての労働者について就業場所・業務の「変更の範囲」を明示すること、有期契約では更新上限など追加事項を確認することを案内しています。以前作った雇用契約書をそのまま使う場合は、現在の様式に合っているか確認した方がよいでしょう。

兵庫労働局では、一般の事業が労働者を雇用した場合、労働保険の保険関係成立届を保険関係成立から10日以内、概算保険料申告書を50日以内に提出することを案内しています。また、雇用保険の対象者を雇う場合、雇用保険適用事業所設置届や資格取得届なども必要になります。

雇用保険について厚生労働省は、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがある方を被保険者とする旨を案内しています。つまり、週10時間のアルバイトと週25時間のアルバイトでは、同じ名称でも扱いが異なる可能性があります。

採用前に使えるチェックリスト10項目

求人を出す前から初回給与の支払いまでに、次の項目を確認してみてください。

・仕事内容、勤務地、採用予定日を決めた。

・勤務日、始業・終業時刻、休憩、休日を決めた。

・時給・月給、交通費、給与の締日・支払日を決めた。

・労働条件通知書・雇用契約書を現在のルールに合わせて準備した。

・労災保険の成立手続きが必要か、提出先と期限を確認した。

・雇用保険の加入対象か、週所定労働時間と雇用見込みを確認した。

・健康保険・厚生年金の加入対象か、事業所と本人の両面から確認した。

・タイムカードや勤怠システムなど、労働時間の管理方法を決めた。

・給与計算で控除する社会保険料・雇用保険料・所得税等を確認した。

・入社後の有給休暇、住所変更、扶養変更、退職などを誰が管理するか決めた。

【具体例】飲食店が週3日、1日5時間のアルバイトを採用するとします。時給だけを決めて求人を出すのではなく、週の所定労働時間、契約期間、休憩、交通費、給与締日を先に決めます。週15時間なら雇用保険の一般的な20時間要件には届きませんが、将来勤務を増やして週20時間以上になるなら、その時点で再確認が必要です。

【具体例】時給1,200円、1日5時間、月12日勤務なら単純な時間給は72,000円ですが、実際の振込額は交通費、残業、雇用保険・社会保険の加入状況、源泉所得税などで変わります。「時給×時間」だけで給与計算が終わるとは限りません。

採用時点で週20時間未満でも、繁忙期や人員変更で契約上の勤務時間を増やすことがあります。その場合は、雇用保険や社会保険の対象になるかを改めて確認します。「入社時に確認したから終わり」ではなく、勤務条件が変わったときに再判定する仕組みを持っておくことが大切です。

給与の締日も実務負担に影響します。たとえば月末締め翌月10日払いなら、月末から支払日までの短期間に勤怠確認、給与計算、振込準備を行う必要があります。経営者自身が給与計算をする場合は、本業の繁忙日と重ならない支払スケジュールも検討材料になります。

よくある失敗と回避策

1.「アルバイトだから労災保険は不要」と考える

労災保険は、雇用保険とは加入の考え方が異なります。たとえば週2日勤務でも、業務中に転倒しけがをすることはあります。兵庫労働局は、労働者を雇用すると法律上当然に労働保険が適用されると案内しています。一般の事業か建設業などかで手続きが異なる場合もあるため、自社の区分を確認しましょう。

2.口頭だけで条件を決める

「17時から22時」と伝えたつもりでも、従業員は毎回5時間勤務と理解し、経営者は忙しい日のみ3〜5時間と考えていることがあります。賃金、勤務時間、契約期間などを文書で明示し、双方の認識を合わせてから働き始めてもらうことがトラブル防止につながります。

3.社会保険を「従業員が少ないから関係ない」と決めつける

日本年金機構では、法人事業所は事業主のみの場合を含め、一定の場合に社会保険の強制適用事業所となると案内しています。個人事業所は従業員数や業種で取扱いが異なります。さらに本人の加入要件も確認する必要があるため、会社の人数だけで判断しないことが重要です。

4.勤怠管理を後回しにする

一人のときは紙やメッセージでも集計できますが、人数が増えると修正や確認が難しくなります。給与計算の締日に慌てないよう、採用時に「どのデータを給与計算に使うか」まで決めておきましょう。

初めての採用を進める5ステップ

STEP1|採用条件を数字と文章で決める

仕事内容、勤務日、時間、賃金、雇用期間、交通費、給与支払日を整理します。最低賃金は改定されるため、兵庫県内で採用する場合も、採用時点の兵庫労働局・厚生労働省の最新情報を確認してください。

STEP2|労働条件を文書で明示する

労働条件通知書や雇用契約書を準備し、就業場所・業務内容・賃金・労働時間等を確認します。有期契約の場合は更新に関する事項も確認します。専門的な規程整備が必要な場合は社会保険労務士へ相談すると安心です。

STEP3|労働保険・社会保険の対象を確認する

労災保険、雇用保険、健康保険・厚生年金を分けて確認します。雇用保険は一般的に週20時間以上・31日以上の雇用見込みが目安ですが、例外もあります。社会保険は事業所の適用区分と本人の働き方を確認します。

2026年9月時点では、短時間労働者の社会保険について月額8.8万円以上という賃金要件がありますが、厚生労働省は2026年10月にこの賃金要件を撤廃予定と案内しています。採用時期が制度改正の前後にまたがる場合は、最新情報を確認してください。

STEP4|勤怠と給与計算の流れを決める

勤怠の締日、給与計算日、振込日を逆算します。社会保険・雇用保険・所得税など、給与から控除する項目も確認します。国税庁では、給与支払事務所等を設けた場合に原則1か月以内の届出が必要と案内しており、給与の支給人員が常時10人未満の場合は源泉所得税の納期の特例を利用できる場合があります。

STEP5|入社後に続く管理項目を決める

採用後は、給与計算だけでなく、有給休暇、住所・扶養変更、社会保険の変更、退職手続き、年末調整などが続きます。「誰が管理するか」「いつ確認するか」を年間スケジュールにしておくと漏れを減らせます。

年次有給休暇は正社員だけの制度ではなく、パート・アルバイトでも勤務日数等に応じて対象となる場合があります。厚生労働省の案内を確認し、付与日数や管理方法を把握しておきましょう。最低賃金も改定されるため、採用時だけでなく毎年の見直し項目として管理することが実務的です。

自社で行うか、外注・相談するかの判断基準

従業員が一人だからといって、すべてを外注する必要はありません。勤務条件の希望や現場のシフト作成は自社で行い、制度判断や毎月の給与計算など負担が大きい部分だけ支援を利用する方法もあります。

外部支援を選ぶときは、①給与計算だけでなく労働保険・社会保険との連携を理解しているか、②法改正時に専門家と連携できるか、③自社の勤怠方法に合わせられるか、④業務範囲と費用が明確か、を確認します。

相談するときは、現在考えている勤務日・勤務時間・賃金・雇用期間が分かれば十分なことも多いです。たとえば「週3日、1日6時間、長期雇用予定」という情報があれば、確認すべき保険や給与計算の項目を絞り込めます。採用条件を決める前の段階で確認しておくと、求人内容の修正も少なくなります。

毎月の給与計算や事務負担まで見直したい方は、内部リンク「バックオフィス代行とは?中小企業が今すぐ導入すべき理由と成功する外注化のポイント」を読むと、内製と外注の比較ポイントを整理できます。

開業直後で採用と税務手続きを同時に進めている方は、内部リンク「開業・会社設立でやることは?個人事業主・法人の手続きチェックリスト【2026年版】」も併せて読むと、開業全体の期限を把握しやすくなります。

労働保険事務を継続的に負担に感じる場合は、「労働保険事務組合」の仕組みも選択肢になります。労働保険事務組合は、中小事業主等から委託を受けて一定の労働保険事務を行う制度です。委託できる範囲や特別加入の要件は事業規模・業種等によって異なるため、具体的には事務組合へ確認してください。

ぴくさぽは、神戸・尼崎を中心に70年以上、記帳・給与計算・社会保険・労働保険など中小事業者のバックオフィスを支援してきました。社会保険労務士、税理士、弁護士、司法書士などとも連携しています。「まだ採用を決めていない」「週2日のアルバイト一人だけでも相談してよい?」という段階でも、必要な準備を一緒に整理できます。

よくある質問

Q1.アルバイトを一人雇うだけでも労災保険は必要ですか?

一般的には、労働者を一人でも雇用すれば労災保険の適用を確認する必要があります。雇用保険とは要件が異なります。建設業など事業区分によって手続きが異なる場合があるため、労働基準監督署や労働局へ確認してください。

Q2.週20時間未満なら雇用保険は不要ですか?

厚生労働省の一般的な要件では、週の所定労働時間20時間以上、31日以上の雇用見込みがあることが基準です。ただし、年齢や雇用形態などで例外的な制度もあるため、迷う場合はハローワークへ確認してください。

Q3.法人で従業員が一人だけでも社会保険は必要ですか?

法人事業所は日本年金機構が示す強制適用の対象となる場合があります。事業所の適用だけでなく、従業員本人が被保険者になるかも確認します。具体的な勤務条件をもとに年金事務所や社会保険労務士へ確認してください。

Q4.給与計算は自分でできますか?

可能ですが、勤怠、残業、保険料、所得税、法改正などを継続的に確認する必要があります。人数が少なくても、経営者の時間を圧迫する場合や制度判断に不安がある場合は、部分的な外注を検討する価値があります。

Q5.採用前でも相談してよいですか?

むしろ採用前の方が、勤務時間や給与の決め方、保険の確認、勤怠方法を一緒に整理しやすい場合があります。「月にこれくらいの人件費で一人雇いたい」という段階でも、必要な確認事項を洗い出すことができます。

まとめ|初めて従業員を雇うときは「採用前の設計」が重要

初めて従業員を雇う手続きでは、求人を出す前に勤務条件を決め、労働条件を文書で明示し、労災保険・雇用保険・社会保険をそれぞれ確認することが基本です。そのうえで、勤怠から給与計算、入社後の変更手続きまで流れをつくります。

経営者がすべての制度を暗記する必要はありません。「これは自社で管理する」「ここは専門家へ確認する」「毎月の事務は外注する」と役割を分けることが、無理なく雇用を続けるポイントです。

ぴくさぽでは、初めて人を雇う段階から、給与計算や労働保険・社会保険に関するバックオフィスの整理をお手伝いしています。神戸・尼崎周辺で「そろそろ人を雇いたいけれど何から始めるか分からない」という方は、採用を決める前でもお気軽にご相談ください。必要に応じて専門家と連携しながら、やることを一緒に整理します。

※本記事は2026年9月時点の公的機関の公開情報をもとに一般的な制度を説明しています。労働保険、雇用保険、社会保険、税務等の取扱いは、業種、事業形態、勤務時間、雇用期間その他の個別事情で異なる場合があります。具体的な加入判定や手続きは、関係行政機関または社会保険労務士・税理士等へご確認ください。

協同組合阪神商工共済会
協同組合阪神商工共済会
創業70年の実績がある協同組合です。 近年重要さが増しているスタートアップ支援、バックオフィス業務の整備などをサポートしています。 給料計算、会計データ入力などの経理部門はもちろん、人を雇用した際の社会保険・労働保険手続き、さらには販売促進や設備投資の際の補助金申請サポートまで幅広い範囲知見をもとに執筆いたします。

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