棚卸のやり方とは?小さな会社の在庫確認・期末棚卸・売上原価を整える5ステップ

目次[非表示]
- 1.(1)「何が・どこに・いくつあるか」を先に確定する
- 2.(2)在庫数量と評価単価を分けて管理する
- 3.(3)棚卸差異は原因を記録し、売上原価と利益へ反映する
- 4.失敗1|店頭だけ数えて倉庫や別店舗の在庫を忘れる
- 5.失敗2|棚卸中にも入出荷が続き、二重計上する
- 6.失敗3|売れ残りを販売価格で評価してしまう
- 7.失敗4|傷んだ商品を会社判断で一律ゼロ円にする
- 8.失敗5|棚卸表だけ作り、会計帳簿に反映しない
- 9.STEP1|対象・基準日・担当者を決める
- 10.STEP2|棚卸表を準備し、商品を数える
- 11.STEP3|帳簿と照合し、差異を確認する
- 12.STEP4|評価単価を確認し、期末棚卸高を計算する
- 13.STEP5|会計へ反映し、翌月の在庫管理に生かす
- 14.Q1.棚卸は決算日の当日に数えないといけませんか?
- 15.Q2.売れ残った商品は全部、今年の経費になりますか?
- 16.Q3.在庫の評価単価は、最後に仕入れた価格でよいですか?
- 17.Q4.賞味期限切れや破損した商品はゼロ円で棚卸してよいですか?
- 18.Q5.兵庫県で在庫管理の相談をするならどこですか?
この記事は、商品や材料を扱う小売店・飲食店・卸売業・製造業などの小規模事業者、特に初めて決算を迎える経営者や、社長が在庫と経理を兼務している会社の方向けです。「棚卸はいつ、何を数えるのか」「在庫の金額はどう決めるのか」「帳簿と実際の数が合わないときはどうするのか」という疑問に答えます。
仕入れた商品がまだ店頭や倉庫に残っているのに、仕入れた金額をすべてその年の費用だと考えていませんか。あるいは、年末に商品を数えてはいるものの、数えた表を会計担当者へ渡すだけで、利益にどう影響するか分からないということはないでしょうか。棚卸は在庫を確認する作業であると同時に、売上原価や利益を正しく計算するための重要な手順です。
ただし、すべての事業者が同じ在庫を持つわけではありません。販売用の商品、加工途中の製品、原材料など、事業によって確認する対象は異なります。また、税務上の評価方法には選択・届出のルールがあり、売れ残りを自由に値下げして費用化できるわけでもありません。この記事では、難しい会計用語をできるだけ避けながら、実際に数える準備から会計への引継ぎまでを5ステップで解説します。
結論|棚卸のやり方で押さえる3つのポイント
(1)「何が・どこに・いくつあるか」を先に確定する
棚卸の出発点は、帳簿の数字を合わせることではなく、実際に存在する商品や材料を確認することです。店頭だけでなく、倉庫、バックヤード、別店舗、返品保管場所なども対象候補になります。所有権が自社にあるか、他社から預かっているだけかなど、特殊な在庫は契約や取引実態に応じて確認してください。
(2)在庫数量と評価単価を分けて管理する
数量が正しくても、掛け合わせる単価が間違っていれば棚卸金額は合いません。棚卸表には商品名、規格、数量、単位、評価単価、金額を別々の欄で残します。単価の決め方は税務上の評価方法と関係するため、前年と同じ方法か、届出・選定状況はどうかを確認します。
出典:国税庁|令和6年分 青色申告決算書(一般用)の書き方・棚卸資産の評価
(3)棚卸差異は原因を記録し、売上原価と利益へ反映する
帳簿在庫と実在庫に差があっても、理由を調べずに数値だけを上書きしないことが大切です。販売入力漏れ、返品、破損、数量単位の取り違えなどを確認し、調整履歴を残します。期末棚卸高は売上原価の計算に直接影響するため、最終金額は経理担当者や税理士等と共有しましょう。
出典:中小機構 J-Net21|企業の利益と法人税額に大きな影響を与える「棚卸資産」の評価
背景|なぜ棚卸をしないと利益が正しく分からないのか
商品を仕入れたとき、現金は先に出ていきます。しかし、その商品がまだ売れていないなら、売上に対応する原価として扱う金額は、単純に「今年の仕入総額」とは一致しません。一般的な商品売買では、売上原価を「期首棚卸高+当期仕入高-期末棚卸高」で計算します。期首棚卸高は前期末から繰り越した在庫、期末棚卸高は今期末に残った在庫の金額です。
出典:中小機構 J-Net21|企業の利益と法人税額に大きな影響を与える「棚卸資産」の評価
例えば、期首在庫45万円、当期仕入300万円、期末在庫39万2,000円の会社なら、売上原価は305万8,000円です。売上450万円なら粗利益は144万2,000円となります。ここで期末在庫を5万円少なく数えてしまうと、ほかの条件が同じなら売上原価は5万円増え、粗利益は5万円少なく見えます。
これは「在庫を多く計上すれば得」という意味ではありません。利益を都合よく増減させるのではなく、実際の数量と適切な評価方法で計算することが必要です。中小機構も、棚卸資産の評価が期間損益に大きく影響する点を説明しています。特に値上げ・値下げの多い業種では、単価の設定も慎重に確認しましょう。
個人事業主の事業所得は、総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。国税庁は必要経費の例として売上原価を挙げています。法人・個人で申告書類や評価方法の届出手続きは異なるため、ここでは共通する実務を先に説明し、税務上の細部は後半で区別します。
今すぐできる対策|棚卸前のチェックリスト10項目
□ 棚卸基準日(決算日など)と作業日時を決めた
□ 店頭・倉庫・別保管場所の在庫の所在を一覧にした
□ 商品・材料ごとの品番、規格、単位を統一した
□ 数える人と確認する人、最終承認者を決めた
□ 入荷・出荷・返品の記録を棚卸基準日で区切る方法を決めた
□ 販売用商品だけでなく原材料・仕掛品なども確認した
□ 破損品・期限切れ品・長期滞留品を別に表示する準備をした
□ 仕入請求書や商品台帳など評価単価の根拠を用意した
□ 実在庫と帳簿在庫の差異を記録する欄を設けた
□ 棚卸表の保管場所と経理・税理士への引継ぎ方法を決めた
全部を一日で整える必要はありません。初めての棚卸なら、まず「商品を識別する番号」「保管場所」「数量」の3つを統一するだけでも効果があります。作業が終わったら、チェックした人・日時・修正理由まで残すと、次回の棚卸にも活用できます。
棚卸表の具体例|数量・単価・金額を分けて記録する
以下は架空の雑貨卸売業の例です。実際の棚卸表では、品番や保管場所、棚卸日、担当者、備考なども加えてください。金額は「数量×評価単価」で計算します。下表の単価は説明用の仮定であり、実際の税務評価額を保証するものではありません。
商品 | 棚卸数量 | 評価単価 | 棚卸金額 |
A商品 | 100個 | 1,200円 | 120,000円 |
B商品 | 80個 | 2,500円 | 200,000円 |
C商品 | 90個 | 800円 | 72,000円 |
合計 | ― | ― | 392,000円 |
商品Aの帳簿数量が105個なのに実際は100個なら、差異はマイナス5個です。まず直近の売上・出荷・返品・移動伝票を調べます。確認できない差異を無理に特定の原因へ当てはめず、「原因調査中」と記録して責任者に報告する方が、後から正しい処理につなげやすくなります。
数量を「箱」で数えた場合は、1箱何個入りなのかを必ず明記します。仕入伝票は箱単位、販売管理は個単位という会社では、換算ミスが起こりやすいためです。重量で管理する食材はキログラム、液体はリットルなど、実際の業務に合った単位を採用し、前回と同じ単位で比較できるようにします。
よくある失敗と回避策|棚卸で起こりやすい5つの問題
失敗1|店頭だけ数えて倉庫や別店舗の在庫を忘れる
売場に並んでいる商品だけを数え、バックヤードの予備在庫や返品保管品を忘れると、数量が不足します。棚卸の前に保管場所の一覧を作り、棚ごとに担当者を割り当てます。自社所有か判断が難しい預け在庫・委託在庫は、契約と取引条件を確認して別管理にします。
失敗2|棚卸中にも入出荷が続き、二重計上する
作業中に商品が入荷したり出荷されたりすると、「数えた後に動いたのか」「数える前に動いたのか」が曖昧になります。可能であれば棚卸時間中の移動を一時停止し、難しければ移動時刻と数量を記録して、基準日時点の数量へ戻せるようにします。決算日の翌日に数える場合も、基準日までの動きを追跡できることが重要です。
失敗3|売れ残りを販売価格で評価してしまう
棚卸表の単価に店頭の販売価格をそのまま入れると、通常の原価評価とは異なる金額になります。税務上は原価法や一定の低価法など、定められた評価方法に従う必要があります。届出をしていない場合の法定評価方法として最終仕入原価法が定められていますが、法人・個人で具体的な確認資料を分けて確認してください。
出典:国税庁|令和6年分 青色申告決算書(一般用)の書き方・棚卸資産の評価
出典:e-Gov法令検索|法人税法施行令 第31条(棚卸資産の法定評価方法)
失敗4|傷んだ商品を会社判断で一律ゼロ円にする
破損、期限切れ、陳腐化した商品があれば、通常品とは分けて数量・状態・写真・処分の記録を残します。ただし、「売れそうにないからゼロ円」と一律に決めることは避けてください。税務上の評価減には条件があり、事実関係と採用している評価方法によって結論が変わります。廃棄する場合も廃棄日や数量などの記録を残し、税理士へ確認します。
出典:国税庁|令和6年分 青色申告決算書(一般用)の書き方・破損品等の評価
失敗5|棚卸表だけ作り、会計帳簿に反映しない
数量を数えた時点で棚卸は終わりではありません。評価単価を掛けて期末棚卸高を集計し、会計処理や売上原価の計算に反映する必要があります。逆に、会計担当者が数字だけを修正し、元の棚卸表を残さないのも問題です。集計表、差異記録、根拠資料をひとまとめに保管しましょう。
具体的な進め方|棚卸を終えるための実務5ステップ
STEP1|対象・基準日・担当者を決める
まず棚卸を行う基準日を決めます。個人事業主の年末棚卸は通常12月31日を基準とし、法人は自社の決算日を基準に考えます。実地作業を別の日に行う場合は、基準日との間の入出庫を正確に調整できるようにします。月次管理のために毎月一部を数える方法もありますが、決算時の残高確認と混同しないようにしましょう。
次に、商品、原材料、仕掛品、半製品、製品など自社に関係する対象を洗い出します。製造業では完成品だけでなく、加工途中のものも重要です。飲食店では未使用の食材や飲料などを、数量・単位・保管場所ごとに整理すると進めやすくなります。自社で扱いが判断できない資産は、経理担当者へ確認項目として残します。
出典:中小機構 J-Net21|いまある在庫の金額は、どうやって計算すればよいでしょうか?
STEP2|棚卸表を準備し、商品を数える
棚卸表には、品番、商品名、規格、保管場所、数量、単位、担当者、確認者、備考欄を設けます。棚卸中は数えた棚に目印を付け、二重計上を防ぎます。数量が多い商品は、箱数とバラ数を分けて記録すると再確認しやすくなります。最初から高価な在庫システムを導入する必要はなく、商品数が少なければ紙やExcelでも始められます。
ただし、Excelで管理する場合も、入力担当者以外が確認できるようにし、集計式の上書きや商品行の重複を防ぎます。共有ファイルの版管理と保存先を決め、棚卸終了後の原本を保護する運用が望ましいでしょう。入力値だけでなく、どの棚を誰が確認したかが分かる状態にしておきます。
STEP3|帳簿と照合し、差異を確認する
実在庫を数え終わったら、販売管理システムや在庫台帳の数量と比較します。差異が出た商品は、出荷漏れ、返品、棚移動、仕入計上漏れ、破損、単位換算などを順番に確認します。担当者の記憶だけで修正せず、可能な限り納品書、出荷伝票、返品伝票などの根拠に基づいて原因を整理します。
差異が大きい商品や高額商品は、別の担当者が再カウントする方法も有効です。棚卸差異を毎回同じ商品で繰り返す場合は、棚卸そのものではなく、日々の入出庫入力や保管場所の運用に原因があるかもしれません。翌月以降の改善点として、商品ごとの誤差の傾向を残しておきましょう。
STEP4|評価単価を確認し、期末棚卸高を計算する
数量が確定したら、採用している評価方法に従って単価を確認し、商品ごとの金額を計算します。仕入単価の確認には請求書や仕入台帳を使います。最終仕入原価法は、期末に最も近い時期の仕入単価を基にする方法ですが、採用できる方法や届出状況は個別に確認が必要です。仕入時の付随費用の扱いなども一律には判断できません。
新設法人が棚卸資産の評価方法を選んで届け出る場合、国税庁は設立第1期の確定申告書の提出期限までと案内しています。個人事業主についても、開業時に評価方法を届け出る場合は最初の確定申告書の提出期限までという案内があります。いずれも、方法を途中で自由に変更できるという意味ではありません。税務上の方法選択・変更は税理士に確認してください。
STEP5|会計へ反映し、翌月の在庫管理に生かす
棚卸表の最終合計を、会計担当者へ提出します。一般的な商品売買の売上原価計算では、期首棚卸高と当期仕入高から期末棚卸高を差し引きます。棚卸調整の仕訳や消費税区分、評価減の可否などは会社の会計処理や取引内容によって異なるため、会計ソフトに入力する前に確認します。
さらに、棚卸結果を経営改善に使いましょう。長期間動いていない商品が多ければ発注数量や販売方法を見直し、欠品が多ければ発注点を調整します。棚卸差異の多い商品には保管場所や入出庫のルールを設けます。毎回の棚卸を「決算のためだけの年1回作業」で終わらせず、月次の粗利益や資金繰りの確認へつなげることが重要です。
出典:中小機構|伴走支援事例:資金繰り表と在庫管理の連動により安定経営を実現
外注・相談する判断基準|在庫管理と記帳の境界を整理する
商品点数が少なく、入出庫も単純なら、自社で棚卸表を作り、経理担当者へ渡す方法でも十分対応できる場合があります。一方、複数店舗、商品数の多さ、仕掛品の管理、返品や委託在庫、仕入単価の頻繁な変更がある場合は、数量確認と会計処理の担当を明確に分け、専門家へ相談することをおすすめします。
ぴくさぽでは、神戸・尼崎を中心とする阪神地域で70年以上、中小企業の記帳・給与計算・労働保険事務などを支援してきました。棚卸表を会計データにつなぐための資料整理や、経理業務の流れを見直す相談から始められます。棚卸資産の税務評価、申告、税務代理等の専門的判断は税理士へ、契約上の所有権など法律判断は弁護士等へ確認することが適切です。
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関連記事:電子帳簿保存法の電子取引データ保存 ― 仕入請求書や電子取引データの保存方法を見直すときに確認できます。
兵庫県の事業者で在庫管理や現場の省力化そのものを相談したい場合は、県が2026年4月に兵庫県よろず支援拠点内へ設置した生産性向上支援センターも選択肢です。県の公表では、製造業に限らず小売・飲食・サービス業等も対象とし、専門家の伴走支援を無料で提供すると案内されています。これは全国共通の税務ルールではなく、兵庫県内の相談窓口情報です。
出典:兵庫県|兵庫県よろず支援拠点内に「生産性向上支援センター」を新設
よくある質問(FAQ)
Q1.棚卸は決算日の当日に数えないといけませんか?
原則として決算日などの基準日時点の数量を確定する必要があります。実地作業を別の日に行う場合は、その間の入荷・出荷・返品等を正確に把握して基準日時点へ調整できることが重要です。作業日をずらす場合は、経理担当者や税理士へ方法を確認してください。
Q2.売れ残った商品は全部、今年の経費になりますか?
通常の商品売買では、売れ残った商品の期末棚卸高を考慮して売上原価を計算します。そのため、仕入れた金額の全額がそのまま当期の売上原価になるとは限りません。個人事業主でも、事業所得の必要経費として売上原価を考える必要があります。
Q3.在庫の評価単価は、最後に仕入れた価格でよいですか?
最終仕入原価法が適用される場合は、原則として期末に最も近い仕入単価を用います。ただし、ほかの評価方法を選択している場合や特殊な在庫では結論が異なります。まず自社の採用方法と届出状況を確認し、前年の計算と整合しているかを見てください。
出典:e-Gov法令検索|法人税法施行令 第31条(棚卸資産の法定評価方法)
Q4.賞味期限切れや破損した商品はゼロ円で棚卸してよいですか?
一律にゼロ円とはできません。商品の状態、販売可能性、廃棄の事実、適用する評価方法などによって取扱いが変わります。通常品と区分して記録し、写真や処分記録などを残したうえで、税理士等に評価方法を確認してください。
Q5.兵庫県で在庫管理の相談をするならどこですか?
記帳や会計データへの反映に関する整理はぴくさぽの相談対象です。現場の在庫管理・省力化の改善については、兵庫県よろず支援拠点内の生産性向上支援センターも相談先の一つです。税務評価や申告は税理士等の専門家へ確認してください。
まとめ|棚卸は「数量・単価・差異」の3点から整える
棚卸のやり方で最も大切なのは、実際の数量を確認し、適切な評価単価を掛け、帳簿との差異を説明できる状態にすることです。小規模事業者でも、保管場所を洗い出し、棚卸表を統一し、数量を数え、差異を調べ、会計へ引き継ぐという5ステップで取り組めます。商品数が多い場合は、一度に完璧を目指すよりも、商品コードや保管場所の管理から改善する方が続けやすいでしょう。
棚卸結果は、決算書の売上原価と利益に影響するだけでなく、売れ残りや過剰仕入れを発見する手掛かりにもなります。現金が減っているのに利益が出ている場合、在庫や売掛金に資金が滞留していないかという視点も役立ちます。数字が合わないときは無理に修正せず、根拠を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。
「商品は数えたが会計への反映方法が分からない」「仕入や在庫の管理が担当者任せ」「開業後初めての決算で何から準備すべきか分からない」という段階でも構いません。神戸・尼崎・阪神地域の中小企業を支えるぴくさぽでは、記帳やバックオフィスの整理を通じて、経営者が自社の数字を把握できる環境づくりをお手伝いします。まずは現在の棚卸表や仕入資料を整理するところからご相談ください。

