従業員が退職するとき会社がすること|社会保険・雇用保険・源泉徴収票の手続きチェックリスト

目次[非表示]
- 1.①退職退職前に、退職日・最終出勤日・有給休暇・返却物を確定する
- 2.②社会保険と雇用保険は期限が違う
- 3.③退職後に本人へ渡す書類まで完了して初めて終了
- 4.退職時の主な期限を一覧で確認
- 5.失敗1|「最終出勤日」を退職日として処理する
- 6.失敗2|有給休暇を会社の都合だけで消滅させる
- 7.失敗3|離職票は「失業給付をもらえそうな人だけ」と会社が判断する
- 8.失敗4|源泉徴収票を翌年の年末調整時期まで渡さない
- 9.失敗5|退職者のシステム権限を残したままにする
- 10.STEP1|退職の申し出を受けたら日付と理由を整理する
- 11.STEP2|最終給与と有給休暇・社会保険料を確認する
- 12.STEP3|健康保険・厚生年金を5日以内に処理する
- 13.STEP4|雇用保険を10日以内に処理する
- 14.STEP5|源泉徴収票・返却物・データ権限まで閉じる
- 15.内部リンク1|「初めて従業員を雇うとき」を読む理由
- 16.内部リンク2|「社会保険・労働保険の手続き」を読む理由
- 17.内部リンク3|「労働保険事務組合とは?」を読む理由
- 18.Q1.10月31日に退職した場合、社会保険の資格喪失日はいつですか?
- 19.Q2.雇用保険の資格喪失届はいつまでですか?
- 20.Q3.退職者の源泉徴収票は翌年1月までに渡せばよいですか?
- 21.Q4.退職日までに有給休暇を全部使いたいと言われたら断れますか?
- 22.Q5.退職手続きを全部ぴくさぽへ任せられますか?
従業員から「退職したい」と言われたとき、会社側では最終給与の計算だけでなく、健康保険・厚生年金、雇用保険、源泉徴収票、貸与品の返却、有給休暇、住民税など複数の確認が同時に発生します。従業員数が少ない会社ほど、経営者や経理担当者が通常業務と兼務しているため、「社会保険は5日以内だったか、雇用保険は10日以内だったか」と混乱しやすいところです。
この記事では、従業員1~20名程度の中小企業を想定し、退職の申し出を受けてから退職後までに会社が確認したい項目を、実務の順番で整理します。退職理由や雇用形態、健康保険の種類などによって取扱いが変わるため、個別判断が必要な場合は年金事務所、ハローワーク、社会保険労務士などへ確認してください。
結論|退職手続きは「退職日を起点」に3つに分ける
①退職退職前に、退職日・最終出勤日・有給休暇・返却物を確定する
まず「退職日」と「最終出勤日」を分けて管理します。有給休暇を消化してから退職する場合、最終出勤日と退職日が離れることがあります。社会保険の資格喪失日や源泉徴収票の交付期限などは退職日を基準に考えるため、社内で日付を曖昧にしないことが重要です。
②社会保険と雇用保険は期限が違う
健康保険・厚生年金保険の資格喪失届は、事業主が事実発生から5日以内に日本年金機構へ提出します。退職による資格喪失日は原則として退職日の翌日です。
出典:日本年金機構|従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き
雇用保険は、被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内に資格喪失届を提出します。離職の場合は離職証明書も重要です。期限を同じものとして覚えず、「社会保険5日・雇用保険10日」と工程表に入れておくと管理しやすくなります。
③退職後に本人へ渡す書類まで完了して初めて終了
給与所得の源泉徴収票は、年の途中で退職した人には退職の日以後1か月以内に交付する必要があります。離職票を必要とする人への対応や、会社から貸与していた物品の返却確認も含め、「役所へ届出を出したら終わり」ではありません。
出典:国税庁|No.7411「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等
背景|小さな会社ほど退職手続きが抜けやすい理由
入社時は「採用」という一つのイベントとして準備しやすい一方、退職時は給与、勤怠、社会保険、雇用保険、税、社内アカウント、鍵・制服・パソコンなど担当部署をまたぐ項目が発生します。専任担当者がいない会社では、経営者・経理・現場責任者がそれぞれ一部だけ対応し、全体を確認する人がいない状態になりがちです。
とくに注意したいのが資格喪失日です。日本年金機構は、退職の場合の健康保険・厚生年金の資格喪失年月日は退職日の翌日と案内しています。たとえば10月31日退職なら11月1日が資格喪失日です。月末退職の場合は退職月分の厚生年金保険料まで必要となります。
出典:日本年金機構|月の途中で入社したときや、退職したときの厚生年金保険料
退職時の主な期限を一覧で確認
手続き・確認 | 主な期限・時期 | 主な提出・交付先 | 実務ポイント |
健康保険・厚生年金 資格喪失届 | 事実発生から5日以内 | 日本年金機構 | 退職なら原則、退職日の翌日が資格喪失日 |
雇用保険 資格喪失届等 | 被保険者でなくなった事実の翌日から10日以内 | ハローワーク | 離職理由・離職票の要否を確認 |
給与所得の源泉徴収票 | 中途退職者は退職後1か月以内 | 本人 | 本人交付用にはマイナンバーを記載しない |
最終給与・勤怠 | 会社の給与締日・支給日に応じる | 本人 | 有給・欠勤・社会保険料等を確認 |
貸与品・アカウント | 原則退職日までに社内ルール化 | 会社 | 鍵、PC、制服、カード、データ権限等 |
今すぐ使える|退職手続きチェックリスト10項目
· □ 退職届・退職の意思表示を確認し、退職日を確定した
· □ 最終出勤日と有給休暇の取得予定を確認した
· □ 最終給与の勤怠・残業・欠勤・各種控除を確認した
· □ 健康保険・厚生年金の資格喪失手続きを担当者と期限まで決めた
· □ 資格確認書など会社で回収が必要なものの有無を確認した
· □ 雇用保険の資格喪失届・離職証明書の準備を始めた
· □ 離職理由について会社側の認識だけで処理せず、資料を確認した
· □ 給与所得の源泉徴収票を退職後1か月以内に交付する予定を入れた
· □ 鍵・制服・PC・携帯・カード・データ・メール等の返却・停止を確認した
· □ 業務引継ぎと取引先・社内への連絡範囲を決めた
よくある失敗と回避策
失敗1|「最終出勤日」を退職日として処理する
有給休暇を消化してから退職する場合など、最終出勤日と退職日は同じとは限りません。社会保険の資格喪失日などに影響するため、退職届・労働者名簿・給与計算・各届出で日付の整合を確認します。
失敗2|有給休暇を会社の都合だけで消滅させる
厚生労働省は、退職すると退職日をもって年次有給休暇の権利が消滅すると説明する一方、退職間近に残存年休を使い切りたいとの申請があった場合、退職後の日に時季を変更できないため、使用者は時季変更権を行使できないと案内しています。引継ぎが必要なら、退職日や引継ぎ日程を早めに話し合うことが重要です。
失敗3|離職票は「失業給付をもらえそうな人だけ」と会社が判断する
被保険者期間が短くても、過去の離職票と組み合わせることで受給資格につながる場合があります。厚生労働省系の案内では、本人が交付を希望しないことが明確な場合を除き、離職証明書の提出を行う扱いが示されています。本人への確認を省略しないようにしましょう。
失敗4|源泉徴収票を翌年の年末調整時期まで渡さない
中途退職者への給与所得の源泉徴収票は、退職後1か月以内の交付が必要です。転職先での年末調整にも使われるため、給与計算の終了とセットで発行する工程にしておくと漏れを防げます。
失敗5|退職者のシステム権限を残したままにする
これは社会保険等の法定届出とは別ですが、実務上重要です。クラウド会計、勤怠、メール、共有フォルダ、顧客管理、ネットバンキング等の権限を一覧化し、退職日を基準に停止・変更します。後から「どのサービスを使っていたか分からない」とならないよう、入社時からアカウント台帳を作ると管理しやすくなります。
具体的な進め方|STEP1~5
STEP1|退職の申し出を受けたら日付と理由を整理する
退職日、最終出勤日、退職理由、雇用保険加入状況、有給休暇残日数、貸与品を一覧にします。自己都合、契約期間満了、退職勧奨、解雇など、離職理由によって雇用保険上の扱いが変わる場合があるため、会社側の呼び方だけで決めず、退職届・雇用契約書・就業規則・経緯資料を確認します。
STEP2|最終給与と有給休暇・社会保険料を確認する
給与締日と退職日の関係を確認し、最終給与に含める基本給、残業、欠勤控除、通勤費などを整理します。社会保険料は月単位で考えるため、月途中退職か月末退職かでも確認が必要です。月末退職では翌月1日が資格喪失日となるため、退職月分まで保険料が必要です。
出典:日本年金機構|月の途中で入社したときや、退職したときの厚生年金保険料
STEP3|健康保険・厚生年金を5日以内に処理する
被保険者資格喪失届を事実発生から5日以内に提出します。資格確認書等が交付されている場合は、本人・被扶養者分の回収対象を確認します。回収できない場合に必要となる届出もあるため、日本年金機構の最新様式・案内を確認してください。
出典:日本年金機構|従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き
STEP4|雇用保険を10日以内に処理する
雇用保険被保険者資格喪失届と、必要に応じ離職証明書を準備します。厚生労働省の手続一覧では、被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内とされています。離職理由は失業等給付の扱いに影響することがあるため、根拠資料を残しておきます。
STEP5|源泉徴収票・返却物・データ権限まで閉じる
給与所得の源泉徴収票を退職後1か月以内に交付し、貸与品の返却、アカウント停止、業務データの保存、引継ぎ完了を確認します。退職者本人に渡す書類と、会社で保存する書類を分けてチェックすると抜けにくくなります。
外注・相談する判断基準|退職者が出るたびに慌てる会社は仕組みを見直す
退職手続きは頻繁に起こらない会社ほど、前回の担当者や処理方法を忘れやすい業務です。「資格喪失届の期限を毎回調べる」「離職票の作成が特定の担当者しかできない」「最終給与と社会保険料の確認で迷う」「給与・勤怠・労働保険の情報が別々に管理されている」といった状態なら、退職時だけでなく日常の管理方法を整理する価値があります。
ぴくさぽは、神戸・尼崎を中心とした阪神地域で、記帳、給与計算、労働保険事務など中小企業のバックオフィスを支援しています。何をどこまで自社で行い、どこから専門家へ確認するか分からない段階でも、まず必要な情報を整理する窓口として相談できます。社会保険・労務上の個別判断など、専門資格が必要な業務は社会保険労務士等との連携・確認が必要です。
内部リンク1|「初めて従業員を雇うとき」を読む理由
入社時に作った従業員情報、雇用契約、勤怠・給与ルールが、退職時の手続きの土台になります。採用から退職までを一つの従業員管理フローとして見直す際に役立ちます。
内部リンク2|「社会保険・労働保険の手続き」を読む理由
退職時だけでなく、入社・変更・年度更新まで含めて社会保険と労働保険の全体像を確認したい場合に適しています。
内部リンク3|「労働保険事務組合とは?」を読む理由
雇用保険など労働保険の事務負担が継続的に大きい場合、事務組合へ委託できる範囲やメリットを確認できます。
よくある質問(FAQ)
Q1.10月31日に退職した場合、社会保険の資格喪失日はいつですか?
原則として11月1日です。日本年金機構は、退職の場合の資格喪失日は退職日の翌日としています。月末退職の場合は退職月分まで厚生年金保険料が必要になります。
Q2.雇用保険の資格喪失届はいつまでですか?
被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内です。離職の場合は離職証明書の取扱いもあわせて確認します。
Q3.退職者の源泉徴収票は翌年1月までに渡せばよいですか?
年の途中で退職した人については、退職の日以後1か月以内に交付する必要があります。転職先での年末調整に必要になることもあるため、早めに発行します。
Q4.退職日までに有給休暇を全部使いたいと言われたら断れますか?
退職後へ取得日を変更できないため、退職間近の残存年休について使用者が時季変更権を行使することはできないと厚生労働省は案内しています。業務引継ぎが必要な場合は、退職日や引継ぎ方法を本人と早い段階で話し合うことが大切です。
Q5.退職手続きを全部ぴくさぽへ任せられますか?
業務内容によって異なります。給与計算や労働保険事務など、ぴくさぽが支援できる範囲を整理したうえで、社会保険・労務上の専門的な判断や資格が必要な業務については、社会保険労務士等との連携・確認が必要です。まず「何をしなければならないか分からない」という段階で相談することは可能です。
まとめ|退職手続きは「5日・10日・1か月」を起点に一覧化する
従業員の退職では、退職日を確定したうえで、最終給与・有給休暇・社会保険・雇用保険・源泉徴収票・貸与品を一つのチェックリストで管理することが重要です。特に覚えておきたいのは、健康保険・厚生年金の資格喪失届は事実発生から5日以内、雇用保険の資格喪失届等は被保険者でなくなった事実の翌日から10日以内、中途退職者の給与所得の源泉徴収票は退職後1か月以内という違いです。
退職者が出るたびに担当者がゼロから調べる状態では、期限漏れや確認漏れが起こりやすくなります。退職手続きチェックリストを一度作り、入社から給与計算、保険手続き、退職まで同じ流れで管理できるようにすると、少人数の会社でもバックオフィスを安定させやすくなります。
ぴくさぽでは、70年以上にわたり神戸・阪神地域の中小企業を支援し、給与計算、記帳、労働保険など日々の事務をサポートしています。「従業員が初めて退職するが何から始めればよいか分からない」といった段階でも、必要事項を整理するところからご相談ください。

