お役立ちコラム

固定資産台帳の作り方|2026年「40万円未満」の新基準と償却資産申告まで実務5ステップ

目次[非表示]

  1. 1.結論|固定資産台帳で押さえたい3つのポイント
  2. 2.背景|そもそも固定資産台帳は何のために作る?
  3. 3.今すぐできる対策|固定資産台帳の10項目チェックリスト
  4. 4.よくある失敗と回避策|小規模事業者が気を付けたい5つ
  5. 5.具体的な進め方|固定資産台帳を整えるSTEP1~5
  6. 6.外注・相談する判断基準|どこまで社内でできる?
  7. 7.よくある質問(FAQ)
  8. 8.まとめ|固定資産台帳は「買った日」から「処分する日」まで使う

【対象読者】開業直後の個人事業主、従業員1~20名程度の会社の経営者・経理担当者、パソコン・厨房機器・工作機械・店舗設備などを購入した事業者向けです。「設備を買ったら全部経費でよい?」「固定資産台帳には何を書けばよい?」「市役所への申告も必要?」という疑問を整理します。

「35万円の機械を買ったので、今年の経費にして終わりにしました」「パソコンを何台買ったか、今は誰も把握していません」。小さな会社では、設備を購入したときの請求書は残っていても、その後の管理が担当者任せになることがあります。ところが、会計上の費用処理、資産そのものの管理、市区町村への償却資産申告は、目的も判断基準も同じではありません。

2026年4月1日以後に取得する一定の少額減価償却資産について、青色申告を行う中小企業者等の特例の取得価額基準は「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられました。一方、この特例で国税上は全額を費用にできても、固定資産税の償却資産申告まで不要になるとは限りません。今回の記事では、2026年の改正点を確認したうえで、固定資産台帳の基本項目、10項目の確認表、実際の記入例、年末から翌年2月までの作業を順番に説明します。

出典:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

出典:神戸市|償却資産の評価方法(国税と地方税の取扱いの違い)

結論|固定資産台帳で押さえたい3つのポイント

1.購入設備は「資産一覧」と「税務処理」を分ける

固定資産台帳は、設備をいつ・いくらで取得し、どこで使い、現在どうなっているかを追跡する一覧です。税務上その年に全額を費用にした物でも、盗難・故障・廃棄を防ぐために管理一覧へ残しておくと便利です。まず「物の所在」と「会計処理」の二つを記録しましょう。

2.2026年4月1日以後の取得は「40万円未満」の特例を確認する

一定の青色申告の中小企業者等では、2026年4月1日以後に取得し事業に使った40万円未満の資産について、要件を満たせば取得価額の全額を損金・必要経費にできる特例があります。ただし年間合計300万円までという上限や、申告上の手続きがあります。「40万円以下」ではなく「40万円未満」です。

出典:国税庁|令和8年度法人税関係法令の改正の概要「主な中小企業税制の見直し」

出典:国税庁|No.2100 減価償却のあらまし

3.国税で費用にしても、市区町村の償却資産申告は別に確認する

固定資産税(償却資産)は、原則として毎年1月1日の資産状況を基準に、市区町村へ申告する制度です。国税の「40万円未満の特例」は地方税にはそのまま適用されません。神戸市は2027年2月1日(月)を次回の償却資産申告期限として案内しています。尼崎市も原則1月31日、休日なら翌開庁日と案内しています。

出典:神戸市|償却資産の評価方法

出典:神戸市|市税の年間スケジュール

出典:尼崎市|固定資産税(償却資産)に関するよくある質問(Q&A)

背景|そもそも固定資産台帳は何のために作る?

事業用のパソコン、製造機械、冷蔵庫、エアコン、内装設備などは、購入後も長く使うものです。通常の減価償却では、取得価額を法定耐用年数などに応じて複数年に分けて費用にします。土地など、減価償却の対象とならない資産もあります。何を資産として管理するかは、事業内容や購入目的によって異なります。

出典:国税庁|No.2100 減価償却のあらまし

「固定資産台帳」は、こうした資産の取得・移動・処分と会計上の金額を追跡するための社内資料です。会計ソフトの固定資産管理機能を使っても、Excelの一覧表から始めても構いません。大切なのは、領収書を保管するだけでなく、設備一つひとつを識別できる状態にすることです。

2026年の改正で「10万円・20万円・40万円」をどう見る?

取得価額の目安

一般的な国税上の考え方

特に確認したいこと

10万円未満

原則、使用開始した年・事業年度の費用にできる

通常の取引単位、税込・税抜の判定

10万円以上20万円未満

一定の要件で3年間の一括償却を選択可能

40万円未満特例との選択、地方税への影響

20万円以上40万円未満

対象となる青色申告の中小企業者等なら少額資産特例を検討

2026年4月1日以後の取得か、年300万円枠

40万円以上

原則として通常の減価償却等を検討

資産区分、耐用年数、取得価額

※上表は制度の入口を示したものです。貸付用資産、リース、法人の規模、青色申告の状況、特例の重複適用制限などで結論は変わります。40万円未満特例を使わず通常の減価償却を選ぶケースもあります。2026年3月31日以前に取得した資産は、従前の30万円未満基準など、取得時点の規定を確認してください。

出典:国税庁|No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

出典:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

「取得価額」は本体価格だけとは限らない

例えば機械本体が34万円でも、事業で使うために必要な運搬費や据付費がかかれば、原則として取得価額に含めて判断します。税込経理なら消費税を含め、税抜経理なら含めない金額で判定するのが基本です。金額を都合よく分割したり、付随費用を無条件に除外したりしないことが重要です。

出典:国税庁|No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用

出典:国税庁|No.2100 減価償却のあらまし

今すぐできる対策|固定資産台帳の10項目チェックリスト

□ ① 資産番号を付けたか:パソコンなら「PC-001」、機械なら「M-001」など重複しない番号を決めます。

□ ② 資産名と数量を記録したか:「パソコン一式」だけでなく、必要なら型式・製造番号も残します。

□ ③ 取得日と使用開始日を分けたか:購入日と実際に使い始めた日が異なることがあります。

□ ④ 取得価額の根拠を残したか:請求書、契約書、運搬費・据付費の明細をひも付けます。

□ ⑤ 使用場所・管理担当者を決めたか:店舗、事務所、倉庫など、所在を分かるようにします。

□ ⑥ 資産区分と耐用年数を確認したか:機械装置、器具備品、建物附属設備、ソフトウエアなどを区別します。

□ ⑦ 10万円・20万円・40万円の税務区分を確認したか:2026年の改正前後の取得日も見ます。

□ ⑧ 特例の年間累計額を管理したか:40万円未満特例は原則年300万円が上限。短い事業年度は限度額の調整があります。

□ ⑨ 償却資産申告の対象かを別欄で確認したか:国税で全額費用にしても、地方税では対象となる資産があります。

□ ⑩ 売却・廃棄・移設の記録方法を決めたか:資産を使わなくなった理由と日付、証拠資料を残します。

この10項目が埋まらない場合は、完璧な台帳を一度に作る必要はありません。まず高額な機械や最近購入した設備から記録し、決算書の固定資産残高と突き合わせていきましょう。経理担当者が一人の会社ほど、管理担当者が変わっても追跡できる書き方が役立ちます。

記入例|神戸の小さな製造業が設備を買った場合

2026年10月に、神戸市内の小規模な製造業が工作機械を35万円で取得し、同月に事業で使い始めたとします。金額は、必要な付随費用を含めて確定した取得価額と仮定します。青色申告等の特例要件を満たし、年300万円枠にも余裕があれば、国税上は40万円未満特例による全額費用処理を検討できます。

管理項目

記入例

資産番号・資産名

M-006/小型工作機械

取得日・使用開始日

2026年10月10日/10月15日

取得価額

350,000円(仮定)

使用場所・担当

神戸工場/製造責任者

国税上の処理

少額減価償却資産の特例を検討(要件確認)

市の償却資産申告

対象となる可能性あり。別途確認

証憑・管理状況

請求書番号を記録/稼働中

ここで重要なのは、「35万円を全額費用にしたから、台帳から削除する」ではないことです。設備は現場に残っていますし、地方税の申告対象かどうかも別に確認する必要があります。税額が35万円安くなるという意味でもありません。全額費用にできる場合でも、税負担への影響は所得・利益や他の条件で異なります。

出典:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

出典:神戸市|償却資産の評価方法

よくある失敗と回避策|小規模事業者が気を付けたい5つ

失敗1|「40万円以下なら何でも一括経費」と思い込む

正しくは「40万円未満」であり、対象者や事業使用、年300万円の限度などの要件があります。40万円ちょうどの資産は、この取得価額基準では対象になりません。購入前に取得日・税込税抜・使用目的・事業年度の枠を確認しましょう。

失敗2|本体代金だけを見て、運搬費や据付費を忘れる

取得価額は、本体代金だけで決まらないことがあります。例えば本体38万円に必要な据付費3万円が加わると、取得価額の判定は変わり得ます。請求書を複数枚に分けても、実態に基づいて判断します。

出典:国税庁|No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用

失敗3|一括で費用処理した設備を、市の申告から外す

神戸市は、国税上の少額減価償却資産の特例が地方税には認められないと明記しています。一方、10万円未満で一定の方法により費用処理した資産や、20万円未満で3年の一括償却を選んだ資産には、地方税で異なる扱いがあります。処理方法まで確認して判断しましょう。

出典:神戸市|償却資産の評価方法(少額の減価償却資産)

失敗4|「150万円未満だから申告不要」と判断する

神戸市・尼崎市は、償却資産の課税標準が150万円未満なら課税されない旨を案内しています。しかし、これは一般に申告自体を省略できるという意味ではありません。尼崎市は免税点未満でも申告が必要と明記しています。申告の要否と納税の有無を分けて考えましょう。

出典:神戸市|固定資産税(償却資産)の概要

出典:尼崎市|固定資産税(償却資産)に関するよくある質問(Q&A)

失敗5|廃棄した機械を何年も台帳に残す

現場ではすでに処分済みでも、会計ソフトの台帳に残っていると、実在しない資産が決算資料に含まれるおそれがあります。年1回、台帳と現物を照合し、売却・廃棄・故障による除却を記録します。税務上の除却損や売却損益の処理は、証拠資料を添えて税理士等へ確認しましょう。

具体的な進め方|固定資産台帳を整えるSTEP1~5

STEP1|購入資料を集め、設備を一つずつ特定する

まず過去1~2年の請求書、契約書、カード明細、通帳、会計ソフトの固定資産科目を確認します。店舗改装、機械、パソコン、厨房設備などを抽出し、資産番号を付けます。1台ごとの判断か、セットで一つの取引単位になるかも確認してください。

出典:国税庁|No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

STEP2|取得価額と使用開始日を確定する

本体価格、運搬・据付などの付随費用、消費税の経理方式を整理します。取得日だけでなく、実際に事業で使い始めた日も残します。決算間際の購入では「買ったがまだ使っていない」というケースがあるため、購入日だけで費用処理を確定させないことが大切です。

出典:国税庁|No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用

STEP3|税務区分を決め、申告に必要な情報をそろえる

10万円未満、20万円未満の一括償却、40万円未満特例、通常の減価償却などを比較します。法人が40万円未満特例を適用する場合、国税庁は損金経理と確定申告書への別表16(7)の添付を必要としています。個人事業主は青色申告決算書等の記載方法を確認してください。判断が難しければ、処理を決める前に税理士へ相談します。

出典:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

出典:国税庁|No.2100 減価償却のあらまし

STEP4|固定資産税の対象を抽出し、所在地ごとに整理する

国税の台帳とは別に「償却資産申告の対象候補」欄を設けます。ソフトウエアなどの無形資産と、機械・器具備品などの有形資産は扱いが異なります。神戸市では区ごとに免税点を判定するため、設置場所の記録も重要です。尼崎市でテナントが施工した内装設備も、申告対象となる場合があります。

出典:神戸市|固定資産税(償却資産)の概要

出典:尼崎市|固定資産税(償却資産)に関するよくある質問(Q&A)

STEP5|決算時と毎年1月に現物確認・申告確認を行う

決算前には台帳の取得価額・減価償却累計額・帳簿価額と会計ソフトを照合します。年末には移設、廃棄、未稼働設備も確認し、翌年1月1日時点の償却資産申告の資料を準備します。2027年の神戸市の申告期限は2月1日(月)です。尼崎市も原則1月31日・休日なら翌開庁日としています。提出先や様式は資産所在地の自治体の最新案内で確認しましょう。

出典:神戸市|市税の年間スケジュール

出典:尼崎市|固定資産税(償却資産)に関するよくある質問(Q&A)

外注・相談する判断基準|どこまで社内でできる?

設備の一覧化、購入資料の整理、使用場所の記録、現物確認は、小さな会社でも始められます。一方、取得価額の税務判断、耐用年数、中古資産の扱い、特例の選択、法人税・所得税申告、償却資産申告の個別判断は、専門家に確認した方が安全な場面があります。

とくに「店舗改装と厨房機器をまとめて発注した」「中古設備を複数購入した」「補助金で機械を買った」「複数市に事業所がある」「国税と地方税の対象資産が一致しない」といった場合は、契約書や明細をそろえた段階で相談するのがおすすめです。

社内の月次残高を確認したい方は「月次試算表の見方」を、設備投資を経営計画とつなげたい方は「経営力向上計画とは?」を参考にしてください。日常の入力や証憑整理を外注したい場合は「記帳代行とは?」が判断材料になります。投資後の資金不足が気になる場合は「資金繰り表の作り方」も役立ちます。

ぴくさぽでは、70年以上にわたり神戸・尼崎を中心とする阪神地域の事業者を支援してきました。固定資産の購入資料や記帳データの整理など、日常のバックオフィスに近い部分から相談できます。税務申告や個別の法的判断については、税理士等の適切な専門家と連携することを前提に進めます。開業前で「何を聞けばよいか分からない」という段階でも構いません。

よくある質問(FAQ)

Q1.2026年に38万円のパソコンを買えば、必ず全額を経費にできますか?

いいえ。2026年4月1日以後の取得であることに加え、青色申告や中小企業者等の要件、事業での使用、取得価額、年間限度額、申告方法などを確認します。38万円が税込・税抜のどちらの金額かも重要です。条件を満たさなければ通常の減価償却等を検討します。

出典:国税庁|No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

Q2.19万円の機械を3年間で一括償却した場合、市への申告は必要ですか?

一定の要件で3年間の一括償却を選択した資産は、神戸市の案内では固定資産税の償却資産の対象外です。ただし、通常の耐用年数による個別償却を選んだ場合などは取扱いが異なります。実際に選択した会計・税務処理を確認してください。

出典:神戸市|償却資産の評価方法(少額の減価償却資産)

Q3.固定資産台帳はExcelで作ってもよいですか?

社内の資産管理表はExcelでも作れます。ただし、台帳を作っただけで税務上の申告・保存要件を満たしたことにはなりません。資産番号、取得日、取得価額、証憑、処分履歴を残し、会計ソフトや申告資料と照合できるようにしましょう。

Q4.税務上の帳簿価額が1円になった設備は、市への申告も不要ですか?

一概にはいえません。神戸市は、固定資産税の償却資産評価には取得価額の5%という最低限度があり、国税の償却計算とは異なると説明しています。まだ事業用に所有している設備は、対象かどうかを確認してください。

出典:神戸市|償却資産の評価方法(国税と地方税の取扱いの違い)

Q5.申告対象の資産が少なく、固定資産税がかからなければ申告不要ですか?

通常はそう判断できません。尼崎市は免税点未満でも申告が必要と明記しています。神戸市も償却資産の申告案内を確認してください。申告先は設備の所在地の自治体です。

出典:尼崎市|固定資産税(償却資産)に関するよくある質問(Q&A)

まとめ|固定資産台帳は「買った日」から「処分する日」まで使う

固定資産台帳は、決算のためだけに作るものではありません。設備の所在、購入金額、使用開始日、税務上の処理、売却・廃棄の履歴をつなぐことで、少人数の会社でも資産を管理しやすくなります。2026年4月1日以後に取得する資産では、少額減価償却資産の特例が「30万円未満」から「40万円未満」へ変わった点も確認しましょう。ただし、特例は無条件ではなく、年300万円の限度や申告手続きがあり、国税と地方税の扱いも異なります。

まずは最近買った設備を10件だけ書き出し、請求書と現物を照合するところから始めてみてください。「どの設備を台帳に載せるか」「税務上の区分が分からない」という場合は、資料を整理したうえで専門家に確認するのが近道です。ぴくさぽは神戸・尼崎を中心に、記帳や経理資料の整理、経営支援などを通じて、相談の入口をお手伝いします。

※本記事は2026年10月29日時点に確認した公的資料に基づく一般的な説明です。税制の適用可否、資産区分、申告の要否は個別事情によって異なります。税務申告の判断は税理士、償却資産申告の詳細は資産所在地の自治体へご確認ください。

協同組合阪神商工共済会
協同組合阪神商工共済会
創業70年の実績がある協同組合です。 近年重要さが増しているスタートアップ支援、バックオフィス業務の整備などをサポートしています。 給料計算、会計データ入力などの経理部門はもちろん、人を雇用した際の社会保険・労働保険手続き、さらには販売促進や設備投資の際の補助金申請サポートまで幅広い範囲知見をもとに執筆いたします。