月次試算表の見方|中小企業の社長が毎月確認したい5つの数字と実務5ステップ

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対象読者:従業員1~20名程度の中小企業・個人事業主、開業直後の経営者、経理を兼務する担当者。検索意図:「月次試算表を渡されても何を見ればよいか分からない」「売上は増えたのに利益や現金が残らない理由を知りたい」を解決します。
「毎月、会計ソフトから試算表は出しているけれど、社長はほとんど見ていない」。小さな会社では珍しくない状況です。売上高の増減だけを確認し、粗利益や固定費、売掛金、借入金の変化まで見ていないと、利益の悪化や資金不足の兆しを見逃すことがあります。
月次試算表は、日々の仕訳を勘定科目ごとに集計した一覧です。決算書ほど難しく考える必要はありません。最初は「売上」「粗利益」「固定費」「営業利益」「現預金・売掛金」の5つに絞り、前月・前年同月と比べるだけでも、経営上の疑問が具体的になります。ただし、入力途中の試算表は確定した数字ではありません。請求書の未入力や棚卸の未反映などがあれば、数字の意味も変わります。
この記事では、全国共通の会計の考え方を中小企業庁・国税庁の公表情報に沿って整理したうえで、架空の小規模事業者の数字を使い、確認する順番、よくある勘違い、月次管理の5ステップを紹介します。神戸・尼崎など阪神地域で相談先を探す場合の公的窓口も補足します。
結論|月次試算表は「数字を5つ見る・前月と比べる・行動を決める」
1.売上だけでなく、粗利益と営業利益をセットで見る
売上が増えても、仕入・外注費がそれ以上に増えれば粗利益は減ります。人件費や家賃を差し引いた営業利益と、粗利率をセットで見ましょう。
2.試算表は「当月」と「期首からの累計」を分けて確認する
会計ソフトは「単月」と「期首からの累計」を分けて表示します。10月までの累計売上を10月単月と取り違えないよう、表示期間、税込・税抜、部門別の条件を確認しましょう。
3.利益と現金は別の数字。預金・売掛金・借入金も見る
売上を計上しても入金が翌月なら、今月の預金は増えません。借入金の元本返済は通常、費用ではなく負債の減少です。損益と預金・売掛金・借入金残高を組み合わせて見ましょう。
背景|なぜ決算を待たずに月次試算表を見るのか
決算書は一年間の結果を振り返る資料ですが、決算後に粗利率の低下に気づいても対策が遅れます。月次試算表なら、仕入条件、値上げ、シフト、販促費を翌月から見直せます。毎月の試算表作成は全国一律の法定提出義務ではなく、経営管理上のおすすめです。
中小企業庁は「中小企業の会計に関する基本要領」で、日々の正しい記帳と、財務情報を使ったタイムリーな経営状況の把握を重視しています。月次試算表を読むことは、その考え方を日常の経営判断に生かす方法の一つです。
月次試算表の5つの数字|架空の小売・サービス事業者の例
次の数字は説明のための架空例であり、業種別の標準値や適正水準ではありません。単位は万円、金額は比較しやすいよう単純化しています。
項目 | 9月 | 10月 | 確認ポイント |
売上高 | 500 | 550 | 50増(+10%) |
売上原価 | 300 | 352 | 52増。売上以上の伸び |
売上総利益(粗利) | 200 | 198 | 2減。粗利率40.0%→36.0% |
販売費・一般管理費 | 170 | 175 | 5増。家賃・人件費等を確認 |
営業利益 | 30 | 23 | 7減。売上増でも本業利益は悪化 |
この会社は10月の売上が9月より10%増えています。しかし粗利率は40.0%から36.0%へ4ポイント低下し、営業利益は30万円から23万円へ減っています。単に「売上が好調」と喜ぶのではなく、仕入単価、値引き、商品構成、外注費、ロスなどの変化を調べるべき場面です。
売上総利益は「売上高-売上原価」、粗利率は「売上総利益÷売上高×100」、営業利益は「売上総利益-販売費及び一般管理費」で計算します。なおサービス業などでは原価の範囲や勘定科目の設定が異なり、会計ソフト上の表示も変わります。自社の科目体系に合わせて読み替えてください。
損益だけでは見えない「現預金・売掛金・借入金」
たとえば10月末の売掛金が前月末より120万円増え、現預金が50万円減っていたとします。売上増の一部がまだ入金されていない可能性がありますが、仕入代金や税金の支払い、設備購入、借入金返済など別の理由も考えられます。売掛金の増加だけを原因と決めつけず、入金予定表と預金明細で確かめます。
借入金の元本返済は、通常は負債の減少として処理され、営業利益から直接差し引かれません。一方、支払利息は損益計算書の費用になります。「黒字なのに預金が減る」ことがあるため、利益の確認と資金繰りの確認は別々に行う必要があります。
今すぐできる対策|月次試算表の10項目チェックリスト
最初から細かい科目を全部読む必要はありません。月1回、次の10項目を同じ順番で確認し、分からない数字に印を付けておきましょう。
□ 対象月、累計期間、税込・税抜の表示条件を確認した | □ 銀行・現金・売上・仕入など主要取引の入力漏れを確認した |
□ 売上高を前月・前年同月・計画と比べた | □ 売上原価と粗利率の変化を確認した |
□ 人件費・家賃・外注費など主な経費の増減理由を確認した | □ 営業利益が増減した理由を一つ以上説明できる |
□ 売掛金・買掛金・未払金の残高に不自然な増減がないか見た | □ 現預金残高を銀行明細・現金管理資料と照合した |
□ 借入金残高と返済予定を別表で確認した | □ 次月に実行する改善策と担当者・確認日を決めた |
10項目のうち一つでも「理由が分からない」ものがあれば、まずはその科目の総勘定元帳や補助元帳を開きます。元帳は取引を一件ずつたどるための帳簿です。試算表の数字を修正する前に、請求書・領収書・預金明細と照合し、どの取引が原因か確認することが大切です。
よくある失敗と回避策|数字を見ているのに判断を誤る5つの例
失敗1|累計売上を当月売上と勘違いする
月次試算表には「当月発生額」「期間累計」「残高」など複数の表示があります。10月だけの損益を見たいのに4月~10月の累計を見ていると、増減比較ができません。回避策は、出力条件を固定し、資料の上部に「10月単月」「4~10月累計」と明記することです。
失敗2|棚卸や未払費用を反映せず粗利率を比較する
商品を仕入れた月に在庫が増えた場合、月次で棚卸をどう反映しているかによって、売上原価や粗利益の見え方が変わります。未払の外注費や給与なども未入力なら、利益が実態より大きく見えることがあります。比較する月同士で処理方法をそろえ、概算値なら「暫定」と明示しましょう。個別の決算整理仕訳は税理士等に確認してください。
失敗3|「利益が出た=使えるお金が増えた」と考える
売掛金が増えたり、借入金の元本を返済したりすると、利益と現預金の動きは一致しません。設備投資も支払額がそのまま当月の費用になるとは限りません。回避策は、損益の表だけで終わらせず、現預金残高、売掛金の回収予定、買掛金の支払予定、返済予定を並べて確認することです。
失敗4|売上の増加率だけを評価し、粗利率低下を見落とす
例の会社は売上が50万円増えた一方、粗利は2万円減りました。値引きや原材料費上昇が理由なら、販促を増やすより価格・仕入・商品構成を見直す方が効果的な場合があります。粗利率の変化を商品別・取引先別に分け、原因が分かるまで安易に値下げしないことが重要です。
失敗5|数字を見ただけで、改善担当者を決めない
「利益が少ないですね」で会議を終えると、翌月も同じ状況になりがちです。「仕入先上位3社の単価を確認する」「外注費が増えた案件を洗い出す」のように、行動を一つ決めます。誰が、いつまでに、どの資料で確認するかまで書くと、月次試算表が経営の道具になります。
具体的な進め方|月次試算表を経営に生かすSTEP1~5
STEP1|毎月の締切と資料の集め方を決める
最初に「翌月何日までに前月の数字を見るか」を決めます。これは法律で定められた月次試算表の提出期限ではなく、社内の管理ルールです。小規模事業者なら、売上データ、仕入・外注請求書、経費領収書、給与資料、銀行・カード明細を集める担当者を決め、毎月同じ順番で処理するところから始めましょう。
資料が揃わない場合は、何が未着かを一覧にして、未確定部分を残したまま「暫定試算表」として確認する方法もあります。ただし、未入力が多い数字で利益を断定しないこと。経営判断に使う資料と、決算・申告のために最終確定する資料の違いを意識してください。
STEP2|売上・原価・経費を入力し、残高の不自然さを点検する
仕訳を入力したら、現預金、売掛金、買掛金、未払金、借入金の残高を確認します。不自然なマイナス残高、前月からの急増、請求書の二重計上がないかを点検し、預金は銀行明細、売掛金は請求・入金管理表と照合します。
法人の総勘定元帳・仕訳帳等は、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します。一定の欠損金がある年度などは10年間となる場合があります。個人事業主は青色・白色や帳簿の種類によって期間が異なります。
出典:国税庁|個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について
STEP3|5つの数字を前月・前年同月・予算と比較する
売上、粗利益、粗利率、営業利益、現預金・売掛金を一枚に並べます。前年同月との比較は季節性を見つけるため、前月との比較は直近の変化をつかむために役立ちます。開業直後で前年実績がない場合は、事業計画や前月と比較すれば十分です。無理に業界平均を目標にせず、まず自社の変化を把握します。
「売上高550万円、粗利率36%、営業利益23万円」と書くだけではなく、「売上は伸びたが、仕入単価上昇と値引きで粗利率が4ポイント低下した」という一文にまとめます。数字を説明できるようになることが、社長自身の経営判断を助けます。
STEP4|損益と資金の動きを別々に確認する
試算表の損益で利益が出ていても、預金残高が減っていれば理由を調べます。売掛金の未回収、仕入代金の支払、借入返済、税金・社会保険料、設備購入などを一覧にし、向こう2~3か月の入出金予定と突き合わせましょう。入金消込の方法が整っていると、売掛金の回収予定も把握しやすくなります。
「今月の利益」と「来月支払える現金」は別の質問です。試算表だけでは将来の現金不足を予測しきれないため、資金繰り表を併用します。支払予定が集中する月は、売上拡大策だけでなく、回収条件や支払予定の確認も必要です。
STEP5|毎月15分の経営確認を習慣にする
最後に経営者と経理担当者で短い確認時間を設けます。議題は「数字が変わった理由」「翌月の改善行動」「次回確認する数字」の3点で十分です。改善策は多くても2~3件に絞り、担当者と期限を決めます。たとえば「粗利率が低い商品を3件抽出」「未回収30日超の請求を確認」「外注費の増加案件を見直す」など、翌月に検証できる内容が適しています。
経営会議が難しければ、社長が試算表に手書きで「なぜ?」「来月確認」とメモするだけでも始められます。大切なのは毎月同じ視点で数字を見て、記録を残すこと。1回の分析で完璧な結論を出すより、小さな改善を継続する方が実務に定着しやすくなります。
外注・相談する判断基準|数字が遅い・合わない・説明できないとき
月次試算表を自社で作るか、記帳を外部へ委託するかは、会社の規模だけで決まりません。「毎月の資料が翌々月まで揃わない」「売掛金残高が合わない」「数字は出るが社長が説明を受けていない」といった状態なら、会計ソフトの変更より先に、資料回収・入力・確認・報告の流れを見直すとよいでしょう。
外部へ任せる場合も、社長自身が見る数字を決めることは重要です。入力を委託しても、値上げ、仕入先変更、採用、設備投資などの経営判断は会社が行います。委託先とは「何日までに月次資料を受け取るか」「どの科目の増減を説明してもらうか」「税務判断は誰が担当するか」を明確にしましょう。
ぴくさぽは、70年以上にわたり神戸・尼崎を中心とした阪神地域の中小企業を支援し、記帳、給与計算、労働保険事務、事業計画などの相談に関わってきました。数字の整理や業務フローの見直しから相談でき、税務上の個別判断や申告代理など資格が必要な業務は税理士等との連携・確認が必要です。
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兵庫県・神戸市・尼崎市で相談先を探す場合
月次試算表の読み方や会計の基本は全国共通であり、兵庫県だけに特別な計算式があるわけではありません。一方、地域の経営相談窓口として兵庫県よろず支援拠点があります。近畿経済産業局の案内では、兵庫県の設置機関は「ひょうご産業活性化センター」で、経営改善・資金繰りなど幅広い相談に対応しています。
出典:近畿経済産業局|中小企業の経営相談窓口「よろず支援拠点」について
また兵庫県は、2026年4月に同拠点内へ生産性向上支援センターを設置し、経営診断や業務効率化の支援を行うと公表しています。これは兵庫県内事業者向けの地域支援の例であり、全国の会計ルールや税務上の義務とは別のものです。
出典:兵庫県|兵庫県よろず支援拠点内に「生産性向上支援センター」を新設
よくある質問|月次試算表の疑問を5つ整理
Q1.月次試算表は毎月必ず作成・提出しなければいけませんか?
月次試算表を毎月税務署へ提出するという全国一律の義務は、通常ありません。ただし、法人・個人事業主とも取引の記帳や帳簿・書類の保存に関するルールはあります。月次試算表は、経営管理や金融機関への説明のために作る実務資料として考えると分かりやすいでしょう。
出典:国税庁|個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について
Q2.損益計算書と試算表は何が違いますか?
試算表は仕訳を勘定科目別に集計した資料で、損益科目だけでなく資産・負債等の残高も確認できます。損益計算書は、一定期間の収益・費用・利益を示す決算書の一つです。会計ソフトでは月次の損益計算書形式で表示できる場合もあります。
Q3.赤字の月が1回あったらすぐに危険ですか?
一概には言えません。季節性、開業時の先行投資、賞与支給月などで単月赤字になる場合があります。ただし、粗利率の低下や固定費の増加が続いていないか、預金残高がどの程度あるかは確認してください。赤字の理由と資金の余裕を分けて見ることが大切です。
Q4.売上は増えているのに預金が減るのはなぜですか?
売掛金の増加、仕入・外注代金の支払い、借入金の元本返済、税金、設備投資などが考えられます。試算表の売上・利益だけでは分からないため、預金明細、売掛金の入金予定、買掛金の支払予定、借入返済表を確認しましょう。
Q5.会計が苦手な社長は何から始めればよいですか?
まず毎月、売上高、粗利益、粗利率、営業利益、現預金・売掛金を前月と比較してください。理由が分からない科目に印を付け、経理担当者や専門家に質問します。最初から専門用語を覚える必要はありません。「何が増えたのか」「なぜか」「来月どうするか」の3つを話せれば十分な第一歩です。
まとめ|月次試算表を「経理資料」から「経営の道具」へ
月次試算表は、社長が会計の専門家になるための資料ではありません。売上、粗利益、固定費、営業利益、現預金・売掛金の変化から、会社の状況を早めに知るための道具です。まずは単月と累計を区別し、前月・前年同月と比較して、数字が動いた理由を一つずつ確認しましょう。
数字に疑問があれば、元帳や請求書、銀行明細へ戻る。原因が分かったら翌月の行動を一つ決める。この小さな習慣が、決算を待たない経営管理につながります。ぴくさぽでは、開業前・開業直後を含め、何から整理すればよいか分からない段階の相談も受け付けています。記帳や給与計算など日々の事務から、必要に応じた税理士等との連携まで、まずは現在の状況をお聞かせください。

