2026年10月から何が変わる?中小企業が9月中に確認したい「労務ルール」4つの重要ポイント

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この記事は、従業員1~20名程度の中小企業・個人事業主で、「10月から最低賃金が変わるのは知っているが、ほかにも対応が必要なのか」「パート・アルバイトの契約書や社会保険も見直すのか」と感じている方に向けた実務ガイドです。
2026年10月1日は、兵庫県最低賃金の改定だけでなく、短時間労働者の社会保険における月額8.8万円以上という賃金要件の撤廃、パート・有期雇用労働者への労働条件明示ルールの追加、カスタマーハラスメント対策等の義務化など、中小企業の雇用実務に関係する変更が重なります。
制度ごとに対象者は異なります。「全部の会社で全従業員の手続きをやり直す」という話ではありません。自社に関係する項目だけを切り分け、給与・雇用契約・社会保険・社内ルールの順に確認することが大切です。この記事では、全国共通の制度を整理したうえで、神戸・尼崎を含む兵庫県の最低賃金についても具体的に確認します。
結論|2026年10月に向けて確認するのはこの4つ
1.兵庫県最低賃金は10月1日から1,172円
兵庫県最低賃金は2026年10月1日から時間額1,172円になります。現在の1,116円から56円の引上げです。兵庫県内の事業場で働く労働者に適用され、正社員だけでなくパート・アルバイトなども原則として対象です。地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の両方が適用される場合は、高い方の最低賃金額以上を支払う必要があります。
出典:兵庫労働局|兵庫県最低賃金 時間額1,172円に改正決定~発効日は令和8年10月1日~
最低賃金は都道府県ごとに金額・発効日が異なります。1,172円は全国一律ではなく、兵庫県の地域別最低賃金です。県外に事業場がある場合は、その事業場所在地の最低賃金を別途確認してください。
2.短時間労働者の社会保険「月額8.8万円以上」の要件が撤廃
2026年10月から、短時間労働者の健康保険・厚生年金保険について、所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金要件が撤廃されます。日本年金機構は、最低賃金以上で週20時間以上働けば月額8.8万円以上となるため、この要件を撤廃すると案内しています。
出典:日本年金機構|短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大
ただし、これだけを見て「従業員20人以下の会社でも、週20時間以上なら全員が10月から社会保険加入」と判断してはいけません。企業規模要件など別の要件があります。2027年9月までは、原則として厚生年金保険の被保険者数51人以上の企業等が特定適用事業所の基準です。50人以下でも労使合意に基づいて任意特定適用事業所になる仕組みがあります。
出典:日本年金機構|短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
3.パート・有期雇用の「雇い入れ時の明示事項」が追加
2026年10月1日から、パートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際の明示事項に、「通常の労働者との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨」が追加されます。厚生労働省は、従来の昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口などに加えて、この事項を明示する必要があると案内しています。
出典:厚生労働省|パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)
10月以降にパート・アルバイトや有期契約社員を採用する予定がある会社は、現在使っている労働条件通知書・雇用契約書の様式を9月中に確認しておくのが安全です。
4.カスタマーハラスメント対策等が事業主の義務に
2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)と、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの防止措置が事業主の義務になります。厚生労働省は、カスハラについて、顧客等の言動であり、業務の性質等に照らして社会通念上許容される範囲を超え、その結果として労働者の就業環境が害されるもの、といった要素を示しています。
これは大企業だけの話ではありません。厚生労働省は2026年10月1日から全ての事業主に義務化されると案内しています。飲食・小売・介護・サービス業など顧客対応の多い業種だけでなく、取引先とのやり取りがあるBtoB事業者も確認しておきたい項目です。
出典:厚生労働省|業種別カスタマーハラスメント対策企業マニュアル等を作成しました
背景|なぜ2026年10月は中小企業の労務確認が重要なのか
小規模事業者の労務管理では、制度改正を一つずつ見ると対応できても、複数の改正が同じ時期に重なると抜け漏れが起きやすくなります。2026年10月は、給与計算に直結する最低賃金、社会保険の加入判断、採用時に使う書類、職場のハラスメント対策という異なる実務が同時期に動きます。
たとえば、10月からアルバイトの時給を改定したものの、労働条件通知書は古いまま、社会保険の対象確認もしていない、という状態では担当者が後から何度も確認することになります。逆に9月中に従業員一覧を作り、「賃金」「週の所定労働時間」「雇用契約期間」「社会保険加入状況」を一枚で見えるようにしておけば、確認はかなり進めやすくなります。
ぴくさぽの主な対象である従業員1~20名程度の事業者では、経営者自身が給与計算や雇用手続きを兼務していることも少なくありません。制度を全部覚えるより、「自社に該当するか」を切り分け、必要な部分だけ専門家に確認する方が実務的です。
今すぐできる対策|9月中のチェックリスト
□ 兵庫県内の事業場について、10月1日以降の時給が1,172円以上になっているか確認する
□ 月給者についても、最低賃金の対象となる賃金を時間額に換算して確認する
□ パート・アルバイトの週所定労働時間と社会保険加入状況を一覧化する
□ 自社が特定適用事業所または任意特定適用事業所に該当するか確認する
□ 10月以降に使うパート・有期雇用向け労働条件通知書の様式を更新する
□ 顧客・取引先からの迷惑行為について、従業員が相談できる窓口・担当者を決める
□ カスハラ発生時の初期対応・報告ルートを社内で共有する
□ 採用面接・インターン等で求職者に接する担当者へハラスメント防止を周知する
□ 給与ソフト・勤怠システムの時給マスターや社会保険設定を確認する
□ 判断が難しい従業員だけを抽出し、社労士・年金事務所等へ早めに確認する
最低賃金の確認では、単純に基本給だけを見るとは限りません。最低賃金の計算に算入しない賃金があります。月給者や各種手当がある従業員について判断が難しい場合は、都道府県労働局・労働基準監督署や社会保険労務士等へ確認してください。
よくある失敗と回避策
失敗1|最低賃金1,172円を全国共通だと思う
1,172円は兵庫県の地域別最低賃金です。最低賃金は都道府県ごとに異なります。神戸市・尼崎市など兵庫県内の事業場では同じ兵庫県最低賃金が基本となりますが、他府県に店舗・営業所がある場合は所在地ごとに確認します。
失敗2|「106万円の壁がなくなる=全パートが社会保険加入」と考える
2026年10月に撤廃されるのは、短時間労働者の適用要件のうち所定内賃金月額8.8万円以上という要件です。週20時間以上、学生ではないことなどの要件や、事業所側の適用要件も確認する必要があります。個別の加入判断は勤務条件と事業所の状況で変わります。
失敗3|以前の労働条件通知書をそのまま使う
10月1日以降のパート・有期雇用では、新しい明示事項への対応が必要です。WordやExcelで自社様式を保存している会社ほど、旧様式を複製して使い続けないよう注意しましょう。
失敗4|カスハラ対策を「クレームを断るルール」だけにする
正当な苦情や要望までカスタマーハラスメントとして扱うことは適切ではありません。会社として方針を示し、相談対応体制を整え、事実関係を確認して適切に対応することが重要です。具体的な制度設計は厚生労働省の指針・パンフレットを確認し、自社の業種や顧客対応に合わせて整備します。
具体的な進め方|STEP1~5
STEP1|従業員一覧を1枚にまとめる
氏名、雇用区分、時給・月給、週所定労働時間、契約期間、社会保険加入状況を一覧化します。まず対象者を見える化することで、最低賃金と社会保険の確認を同時に進められます。
STEP2|10月1日時点の給与条件を確認する
兵庫県内では10月1日から最低賃金1,172円です。時給者はもちろん、月給者についても必要に応じて時間額換算を行います。賃金変更が必要なら、給与ソフト・勤怠システム・雇用条件の変更も連動させます。
STEP3|パート・有期雇用の書式を更新する
10月以降の採用・契約更新で使用する書類を確認します。特に自社で作成した雇用契約書や労働条件通知書は、法改正対応済みかをチェックします。法的な判断や就業規則との整合確認が必要な場合は社会保険労務士等へ相談します。
STEP4|カスハラ・求職者等セクハラの社内対応を決める
少なくとも、誰に相談するか、相談を受けたら誰が事実確認するか、緊急時に誰が現場を離れさせるか、といった初動を決めておきます。採用面接や職場見学など求職者と接する場面についても、担当者へルールを周知します。
STEP5|自社だけで判断しにくい項目を切り分ける
全従業員について専門家へ丸投げする必要はありません。境界となる勤務条件の人、社会保険の加入判断が難しい人、複雑な手当がある人などを抽出して相談すれば、確認の効率が上がります。
外注・相談する判断基準|給与・社会保険・雇用書類が連動している会社ほど早めに
今回のような改正では、「最低賃金だけ」「社会保険だけ」と分けて考えると、実際の給与計算や雇用契約との整合が取れなくなることがあります。従業員数が少なくても、パート比率が高い、シフトが毎月変わる、入退社が多い、複数の時給区分がある会社は、早めに事務フローを確認する価値があります。
ぴくさぽは、神戸・尼崎を中心に70年以上、中小事業者の記帳、給与計算、社会保険・労働保険などのバックオフィスを支援しています。専門判断が必要な事項は税理士・社会保険労務士・弁護士・司法書士等と連携し、「どこに聞けばよいか分からない」という段階から整理できることが特徴です。
内部リンク候補①「2026年度の最低賃金」関連記事:兵庫県の1,172円への改定について、月給者の確認方法や給与改定を詳しく知りたい方に。
内部リンク候補②「106万円の壁撤廃」関連記事:短時間労働者の社会保険加入要件を、従業員別に詳しく確認したい方に。
内部リンク候補③「初めて従業員を雇うとき」関連記事:労働条件通知書、給与、社会保険・労働保険など採用時の手続きを一通り確認したい方に。
よくある質問
Q1.兵庫県の最低賃金1,172円はいつからですか?
2026年10月1日からです。前年の兵庫県最低賃金は1,116円で、2025年10月4日から適用されていました。2026年度は発効日も10月1日となるため、前年と日付が異なる点にも注意してください。
出典:兵庫労働局|兵庫県最低賃金 時間額1,172円に改正決定
Q2.従業員20人の会社でも、10月からパート全員が社会保険に入りますか?
一律ではありません。2026年10月に賃金要件は撤廃されますが、企業規模要件など他の条件があります。従業員数だけで即断せず、自社が特定適用事業所・任意特定適用事業所に該当するか、各従業員の勤務条件がどうなっているかを確認してください。
Q3.カスハラ対策は小さな会社にも必要ですか?
はい。厚生労働省は2026年10月1日から全ての事業主にカスタマーハラスメント対策が義務となると案内しています。会社規模にかかわらず、自社の業種・顧客対応に合った方針と相談体制を確認しましょう。
Q4.パートの契約書は10月1日に全員作り直す必要がありますか?
今回の改正は、パート・有期雇用労働者を雇い入れた際の労働条件明示事項の追加です。既存従業員の契約書を一律に全て作り直すという単純な話ではありません。契約更新や自社の運用状況によって対応が異なるため、現在の様式と運用を確認し、必要に応じて社会保険労務士等へ相談してください。
Q5.10月から始まる「保険料調整制度」とは何ですか?
一定の対象事業所が、対象となる短時間労働者の健康保険料・厚生年金保険料を一時的に追加負担することで、対象者本人の保険料負担を通算3年間軽減できる制度です。日本年金機構は、一定期間経過後に追加負担分を調整するため、最終的に事業主が納付する保険料は増えず、被保険者が将来受け取る年金額にも影響しないと案内しています。対象事業所・対象者・申出期限がありますので、利用を検討する場合は個別確認が必要です。
まとめ|10月改正は「給与・社会保険・雇用書類・社内ルール」をセットで確認
2026年10月1日は、中小企業の労務実務に関係する変更が複数あります。兵庫県最低賃金は1,172円へ、短時間労働者の社会保険では月額8.8万円以上という賃金要件が撤廃され、パート・有期雇用の労働条件明示事項も追加されます。さらに、カスタマーハラスメントと求職者等へのセクシュアルハラスメント対策が事業主の義務になります。
大切なのは、改正情報を読んで終わるのではなく、自社の従業員一覧、給与設定、労働条件通知書、相談体制まで落とし込むことです。何から確認すればよいか分からない場合は、まず現在の従業員数・雇用形態・給与体系を整理するだけでも十分な第一歩です。
ぴくさぽでは、開業前から日々の記帳・給与計算、社会保険・労働保険まで相談できます。専門的な判断が必要な場合には適切な士業と連携しながら整理します。「自社が今回の改正に該当するのかだけ確認したい」という段階でも、まず相談先を一本化しておくと対応しやすくなります。

